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BTS擁するHYBE、新成長戦略を発表 狙いは?

» 2024年08月08日 17時32分 公開
[小松恋ITmedia]

 BTSやSEVENTEENなどのアーティストを擁する韓国のエンターテインメントライフスタイルプラットフォーム企業HYBEは、エンタメ産業で強いリーダーシップを発揮していくための新事業戦略「HYBE 2.0」を発表した。

 HYBE 2.0は、「ファン」と領地や集団などを表す「ダム」を合わせた造語である「ファンダム」のビジネスモデルを、グローバルの主要な市場へと拡大展開すると同時に、急速に変化する市場環境に対応して積極的にイノベーションを実現していくという構想だ。

HYBE JAPANのオフィス(以下プレスリリースより)

マルチレーベル強化の新組織設立 狙いは?

 同構想では、これまでの「レーベル」「ソリューション」「プラットフォーム」によって構成していた3大事業領域を、「音楽」「プラットフォーム」「テクノロジー基盤の未来成長事業」に再編成する。

 音楽事業部門では、現地の市場をリードする事業者としての地位を確保する「マルチホーム・マルチジャンル」戦略を掲げた。日本、米国、ラテンアメリカを中心に、現地の文化と特性を反映した事業を展開する。

 世界第2位の音楽市場である日本では、ローカライズしたアーティストの育成と、J-POP市場への進出に注力していく。HYBEが日本でも韓国での地位に匹敵するリーディングプレイヤーとして位置付けられることを最終目標とし、日本市場での存在感を高めていくという。

 HYBE JAPAN会長には、元SMエンターテインメント総括社長のキム・ヨンミン氏が就任。同氏は、K-POP産業でHYBEが確立した成功の方程式を日本市場に取り入れていく。

 HYBEは成長をさらに加速させるため、韓国と日本のマルチレーベル事業を統括する新組織「HYBE MUSIC GROUP APAC」を設立する。HYBE LABELS傘下の韓国のレーベル「BIGHIT MUSIC」代表シン・ヨンジェ氏が、初代代表に就任した。

 同氏は2019年にHYBEの前身であるBig Hit Entertainmentに入社。さまざまな戦略、政策、事業モデルの開発を担当した。2020年にはBIGHIT MUSICの代表取締役を務め、BTSやTOMORROW X TOGETHERなどのアーティストがグローバル市場で成果を出せるよう組織をリードしてきた。

 世界最大の音楽市場である米国では、HYBE AMERICA傘下に新しいレーベルサービスをローンチする。現地に根ざした新人開発やマネジメント契約など、総合的なレーベルサービスを運営していく予定だ。

 ラテン市場を担当するHYBE LATIN AMERICAでは、プロデューサーやアーティストを迎え入れ、育成を進めている。有力な現地代表事業者とのパートナーシップを通じて、音楽をベースにした多様なビジネスモデルとテクノロジーを主力とする新規事業を展開していく予定だ。

プラットフォームやゲーム事業を拡大

 1億ダウンロードを超える“推し活”プラットフォームの「weverse」では今後、サブスクリプション型メンバーシップサービスを開始する予定だという。デジタルメンバーシップカードや、ボーナスJelly(デジタル支払い方法)チャージ、広告なしでの映像視聴、VODオフライン保存などをできるようにする。

 オプションとして、メンバーシップ限定コンテンツへのアクセスやイベントへの優先参加を可能としている。アーティストとファンのコミュニケーション窓口「weverse DM」では、今年中にHYBE LABELSアーティストをはじめとした多様なアーティストによるサービスを拡大するという。

 テクノロジーを基盤とした未来成長事業では、中長期的な新たな成長エンジンを確保する。ゲーム事業では、アクションRPG「星になれ ヴェーダの騎士たち」を4月にリリースした。

4月にローンチしたアクションRPG「星になれ ヴェーダの騎士たち」

 他にも、オーディオ技術、生成AI、オリジナルストーリービジネスなどの事業を戦略的に展開。今後の会社の方向性や収益性を考慮しながら新たな投資を慎重に進めていく。

 HYBE新CEOのイ・ジェサン氏は「HYBE2.0を基盤に当社は、韓国およびグローバルでの音楽事業を持続的に発展させ、プラットフォーム事業を通じて変化するスーパーファン市場でのリーディングポジションを強固なものにし、テクノロジー基盤の未来成長事業を通じて中長期的な成長エンジンを確保することに注力していく」とコメントした。

HYBEが新事業戦略「HYBE 2.0」を発表

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