急成長する“もう一つ”のポイント経済圏 知られざる「モッピー」のビジネスモデル「ポイント経済圏」定点観測(2/5 ページ)

» 2024年08月12日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

ポイント経済圏のビジネスモデルの進化

 ポイント経済圏という言葉を耳にすると、多くの人は楽天ポイントやdポイントなどを思い浮かべるだろう。確かに、これらの大手ポイントは私たちの日常生活に深く浸透している。しかし、ポイントビジネスの世界はそれだけではない。知る人ぞ知る「もう一つのポイント経済圏」が存在し、静かに、しかし着実に成長を続けているのだ。

 ポイント経済圏という言葉が広く使われるようになったが、その本質は何だろうか。実は、ポイント経済圏とは、割引によるマーケティング手法の進化形だ。その発展過程を追うことで、モッピーのようなポイントサイトの位置付けがより明確になる。

 ポイントシステムの原点は、割引にある。しかし、単なる値引きとは異なり、ポイントには「貯める」という要素が加わる。これにより、顧客の再来店や継続的な利用を促す効果が生まれる。つまり、ポイントは顧客の囲い込みツールとして機能するのだ。

 このポイントシステムの最もシンプルな形が、自社発行ポイントだ。その代表例として、ヨドバシカメラのゴールドポイントカードが挙げられる。購入金額に応じてポイントが付与され、そのポイントは次回の買い物で使用できる。これにより、顧客は自然とヨドバシカメラでの購入を選択するようになる。自社への囲い込みツールとして機能しているわけだ。

 しかし、ビジネス環境の変化に伴い、より広範囲な顧客囲い込みの必要性が生じた。そこで次の段階として登場したのが、旧Tポイントに代表される共通ポイントだ。これは、ポイントを発行したり利用したりできる提携店舗を増やし、囲い込みの幅を広げたものだ。

 顧客は、ECサイト、携帯電話、クレジットカードなど、企業グループ内のさまざまなサービスを利用することでポイントを貯める。そして、貯まったポイントは提携店舗で使用できる。複数の企業が共通のポイントを持ち連携することで、より大きな「経済圏」を形成し、顧客にとっての利便性を高めている。

 そして、この流れをさらに進化させたのが、モッピーのようなポイントサイトだといえる。ポイントサイトに行くと、クレジットカードの申し込みやECサイトへのショッピング、動画配信サイトへの登録などが数多く並んでいる。さらに申し込んだ場合にもらえるポイント数が記載されており、ユーザーはポイントサイト経由で申し込めば、追加でポイントを得られるのだ。

モッピーのビジネスモデル。成果報酬型広告を掲載し会員に見せるという意味ではメディアビジネスに近いが、対価として会員にポイントを付与することがビジネスモデル的には大きく異なる

 どういったビジネスモデルなのか。ポイントメディア事業部マーケティンググループマネージャー、坂下昌範氏はこう説明する。「広告代理店からアフィリエイト案件をもらい、掲載料ではなく成果報酬で広告主から報酬をもらいます。その報酬の50〜80%をユーザーに還元しています」

 モッピー自体は商品やサービスを販売せず、依頼のあった顧客にユーザーを誘導する形を取る。メディアなどの広告ビジネスと同じ形だ。そして、顧客が商品を買ったりサービスを申し込んだりして成約したら、顧客はモッピーに成果報酬という形で報酬を支払う。モッピーはそのうちの7割程度をポイントの形でユーザーに還元するという形だ。

 このように、ポイント経済圏は、自社単体ですべて完結するところからスタートし、他社も巻き込んだ共通ポイントに発展した。そして会社単位から商品・サービス単位へと粒度を細かくし、経済圏というよりも、お得の概念を前面に押し出した。

 共通ポイントの競争が激化する中、実はそこに並走する形で、こうしたポイントサイトが急成長しているわけだ。

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