「パズルキューブ」0.305秒で攻略! なぜ、三菱電機のロボットが“世界一”になれたのか(3/5 ページ)

» 2024年09月19日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]

世界一の達成を支えた3つの技術

 実際にトクファストボットの動く様子を見ると、瞬きをしたら見逃してしまいそうなほどのスピード感で「とにかく速い」ことが分かる。“正確”に“速く”パズルキューブを解くにあたり、「位置決め」「色識別」「機器間の信号接続と制御」の3つの技術がポイントになっているという。

回転不足だとパズルキューブを停止した際にズレが生じるが、動作制御が正確にできると高速回転しても定位置に止められる

 1つめが、まさに三菱電機が証明したかった巻線機の技術を応用したパズルキューブの「位置決め」をする技術だ。巻線機はモーターの製造工程でコイルをつくる際に使用されており、「電線を正確な位置に速く配置する動作制御」が技術の肝となる。このズレなくきれいに電線を巻きつける技術が、高速回転後のパズルキューブを正しく停止させることにつながっているという。

赤やオレンジといった似ている色を正しく判別するため、AIを搭載した色認識アルゴリズムを活用

 2つめが、AIを用いた色認識アルゴリズムを応用した「色認識」の技術だ。パズルキューブの色を合わせるにあたり、ロボットに設置したカメラで撮影し、AIが色を認識しているのだが、当初のアルゴリズムでは赤やオレンジといった似ている色の認識が難しかった。ブロックの位置やロボットハンドの影によって、同じ色でも見え方に差異があったためだ。

 そこで、見え方が異なっていても瞬時に認識するために、色認識アルゴリズムを応用して色の見え方の差異を補正することに。時間はかかるが正確に認識できる賢いAIをベースにして、高速だが時々認識を誤るAIを学習させ、「スピード」と「正確性」を両立できる自動の色認識を実現させた。

使用している機器は、すべて自社製品で構成している

 3つめは、複数の機器間の「高速な信号接続と制御」の技術となる。パズルキューブを回転させているサーボモーターをはじめ、産業用PC、タッチパネル表示機器、カメラなどの主要機器を自社製品で構成し、機器同士の高速な信号接続と制御をかなえた。

 自社の技術の証明として、特注の機器ではなく、すでに発売済の製品だけで構成したのがポイントだという。

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