自治体DX最前線

自治体の生成AI活用術 DXのための具体的ステップとは?【プロンプト例あり】(1/3 ページ)

» 2024年09月24日 11時00分 公開
[川口弘行ITmedia]

 こんにちは。地方自治体のデジタル化をサポートしている川口弘行です。

 近年、全国の自治体を対象とした生成AIの利活用に関する研修や支援の依頼が増加しています。講師として招かれる自治体の状況は多岐にわたります。「生成AIについてうわさは耳にしているものの、どういうものなのか分からない」という段階から、「生成AIツールを導入したにもかかわらず、期待していたような活用成果が得られていない」という段階まで、さまざまです。

 生成AIの利活用を自治体に効果的に定着させるためには「マネジメント視点での支援」と「テクノロジー視点での支援」の両輪をバランスよく推進することが不可欠です。

 マネジメント視点は、生成AIを人間中心で活用するためのマインドセットの醸成を含みます。これまでの私の記事の多くは、生成AI活用における課題整理を通じて、みなさんのマインドセットの変革方法を中心に解説してきました。

 一方、テクノロジー視点は、情報セキュリティポリシーとの整合性を保ちつつ、費用対効果の高い生成AIツールの選定、構築、導入に焦点を当てています。必要に応じて、セキュリティポリシーの改定支援も行っています。

 支援の重点は自治体の状況に応じて変わりますが、最終的な目標は常に「自治体業務をいかに効率化・高度化するか」にあります。この目標に向けて、マネジメントとテクノロジーの両面からアプローチすることで、生成AIの真の価値を引き出すことができます。

 今回は、テクノロジー視点から、自治体が生成AIツールを導入する上で押さえるべきポイントを考えたいと思います。ツールの性能や機能を十分に理解しないまま闇雲に導入するだけでは、却ってDXの歩みを遅らせる可能性もあります。なぜ、生成AIツールを導入する必要があるのか――。ビジョンの明確化が重要な理由を、順を追って見ていきましょう。

生成型AI利活用支援の方針

著者プロフィール:川口弘行(かわぐち・ひろゆき)

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川口弘行合同会社代表社員。芝浦工業大学大学院博士(後期)課程修了。博士(工学)。2009年高知県CIO補佐官に着任して以来、省庁、地方自治体のデジタル化に関わる。

2016年、佐賀県情報企画監として在任中に開発したファイル無害化システム「サニタイザー」が全国の自治体に採用され、任期満了後に事業化、約700団体で使用されている。

2023年、公共機関の調達事務を生成型AIで支援するサービス「プロキュアテック」を開始。公共機関の調達事務をデジタル、アナログの両輪でサポートしている。

現在は、全国のいくつかの自治体のCIO補佐官、アドバイザーとして活動中。総務省地域情報化アドバイザー。

公式Webサイト:川口弘行合同会社、公式X:@kawaguchi_com


性能の低い生成AIツールが招く悪循環

 実際のところ、マネジメントとテクノロジーの両面において、筆者はある程度の支援の道筋を見出しており、一定のレベルまでは順調に進めることができます。しかしながら、多くの自治体が次に直面する課題は「生成AIを具体的にどのように活用すべきか分からない」というものです。

 この課題は、次の疑問の裏返しであるとも言えます。

 「生成AIで何ができるのかが分からない

 さらに言葉を補うとすると、「手持ちの生成AIツールで何ができるのかが分からない」ということです。

 生成AIツールは機能や性能に幅があるため、自治体が明確な目標を持っていても、手持ちのツールでは実現できないケースが少なくありません。性能の低いツールを使用すると、実現可能な範囲が限られてしまい、それによって「何をすべきか」がさらに不明確になるという悪循環に陥る可能性があります。このような状況では、ツールの制約が活用の幅を狭め、結果として生成AIの潜在的な価値を十分に引き出せないことになります。

 批判を覚悟で書きますが、行政専用のネットワークであるLGWAN-ASPで提供されている生成AIツールは、次の制約により十分な機能や性能を提供できていないのではないかと考えます。

  • 生成AIそのものの技術革新のスピードが早く、LGWAN-ASP側の開発が間に合っていない。例えば、OpenAIが新しい言語モデルである「o1」の提供を開始したが、これを利用できるLGWAN-ASPはない
  • LGWAN-ASPはその仕組み上、急激な利用拡大に対応できないことから、年間の利用量(文字数)を制限しているものが多い。制限を気にしながらでは自由に使うことができない
  • データを直接読み書きする機能がない、あるいは不十分なため、高度なデータ分析や事前情報を読み込ませた利活用ができない

 筆者は上記の制約を受けることなく生成AIの利活用を進めるために、有償版のChatGPT Teamを使うことを提案してきました。小規模で始める場合、1メンバー(利用権)あたり年額300ドル(約4万円)、2メンバーから導入できるため、年間約10万円でフルパワーのChatGPTを使うことができます。

 また、庁内(LGWAN接続系)からChatGPTを安全に使うためのソリューションもあるので、生成AI利活用の選択肢の一つとして検討してみてください。

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