直近ではインボイス対応の特需によって、ハンコ関連商品が一時期と比較して盛り返していると話す舟橋社長だが、入社当時から持ち続けている危機感は今も持ち続けている。
「こうした一時的な好調のたびに社員は『まだ大丈夫』と思ってしまうものです。しかし、実際はそんな簡単な話ではありません。だからこそ、あえて『脱ハンコ』的な商品やビジネスを、これまで培ったハンコの技術から生み出していきたいと考えています」
役員級人材の中途採用も強化し始めた。「新たな視点を持ち、商品を開発するにはやはり外部の刺激が必要ですから」と舟橋社長は狙いを話す。また、内部に対しては失敗を恐れないことの重要性を説いているという。
「私自身、これまで新たな事業を進めるにあたり大きな失敗をし、損失を生んできました。しかしそれらが最終的に実を結び、今では商品化に至っています。だからこそ、社員には常に新しい視点や挑戦するマインドを持ち仕事に当たってほしいと伝えるようにしています」
最後に、ちょっと気になっていた質問をぶつけた。世の中には「シヤチハタ不可」としている書類がある。これについてはどう考えているのか。舟橋社長に質問したところ意外にも「こんなに光栄なことはない」と返ってきた。
不可・禁止ではあるものの、自社の商品が、わざわざ名指しでさまざまな書類に印字してある点が誇らしいのだという。最近では、採用面接を行った高校生が、シヤチハタを詳しく知らなかったことがあったという。ハンコが当たり前ではなくなった時代に、いかに認知度を上げていくかは今後の課題だ。
次の100年に向けて、いかに「ハンコの会社」から脱却していくか。「判を押したよう」と言われないような、斬新な商品がカギを握っている。
フリーライター・編集者。熱狂的カープファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。
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