ミュゼプラチナムを完全子会社化した際、船井電機・ホールディングスは「船井電機は主力のテレビ事業以外に美容機器を製造販売しているから」と説明した。ミュゼプラチナムを買収できれば、家庭用脱毛機器や美顔器など新商品を共同開発することで「シナジー効果」が得られるというのだ。
そう聞くと、「全然おかしいことはないじゃないか」と思うだろうが、船井電機の社員ならばなんとも釈然としないはずだ。船井電機が扱う美容機器は2019年に開発した「ネイルアートプリンター」で、同社が得意とするプリンターの技術を応用したものだ。
一方、ミュゼプラチナムはご存じのように「脱毛サロン」なので、ネイルは関係ない。サロンで用いられているのは光美容器、美顔器、EMS美容ブラシだ。
つまり、船井電機の社員たちは、これまで長い歴史で培ってきた得意分野とは全く関係のない分野で、ゼロから脱毛器や美顔器を開発していかなければいけない。シナジー効果というにはかなり乱暴というか、「美容」というあまりにも大きなくくりで強引にこじつけて「シナジー」と苦しい言い訳をしているような印象を受ける。
カンのいい社員だったら、「なんかヤバいことを始めたな」と不審に思うはずだ。経営が迷走する前に見切りをつけて、さっさと転職しようと考え、行動に出た人もいたのではないか。
仮にこの時に気付かなくても(2)のミュゼプラチナム売却タイミングになれば、「これはさすがにおかしなことが進んでいるな」と感じるはずだ。
シナジー効果を掲げて完全子会社化したものを、わずか1年で手放すのは、おおよそまともな会社がやることではない。
もちろん、M&Aした会社を短期間で手放してキャピタルゲインを得るという目的もなくはないが、1年前には「美容業界でシナジー効果」「次の成長の柱にする」と経営陣が胸を張っていたのだ。
それが舌の根も乾かないうちに手放せば、社員からすれば「ミュゼプラチナムを買ったのは失敗だったんじゃない?」と思うのが自然だろう。
その可能性に気付いた社員の中には、ミュゼプラチナムについてオフィシャルに語られていること以外のことを調べる人もいるかもしれない。
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