ユーザーの熱狂を巻き起こし爆発的に成長する企業と、そうでない企業の違いはどこにあるのか? そして、それは意図的につくり出せるものなのか? The Breakthrough Company GOでクリエイティブディレクターを務めながら、経営学者・入山章栄教授のもとで経営理論の研究を行う筆者が見いだした、新たな経営×クリエイティブのフレームワークを紹介します。
第3回までの記事では、いかに経営者の暗黙知を引き出しパーパスとして言語化するか、そしてそのパーパスをどうやって組織に浸透させるかを、フレームワークと事例の両面から解説してきました。
今回は、企業の中にできた”宗教”をいかに外部へと広げていくか、いわゆる「アウターブランディング」についてお話します。
アウターブランディングとは「サービスやプロダクト、コミュニケーションなどのタッチポイントを通して、企業の”信者”を増やしていく活動」だと、筆者は考えています。
では、熱狂的な”信者”を持つ企業は、どのように外部に自分たちの”宗教”を広げているのでしょうか。ここで、作家のサイモン・シネック氏が提唱する「ゴールデンサークル」について紹介しましょう(図1)。
企業の活動は大きく、「WHY(なぜやるのか)」「HOW(どうやるのか)「WHAT(何をやるのか)」の3つに区分されます。ゴールデンサークルは、世の中の偉大な企業は「まずWHYから語る」と言っています。
PCを例に考えてみましょう。一般の企業は「私たちのこのPCは世界最軽量、そして世界最薄。それを可能にしたのが、私たちの技術です」のようにWHAT→HOWの順番で語ります。
一方、アップルは違います。「人と違う視点を持とう。世界を変えるために。美しいデザイン。使いやすいUI。新しいMacの誕生です」のようにWHY→HOW→WHATの順番で語るからこそ、熱狂的に支持される企業になれるといわれています。
では、なぜ「WHY」から語ることが大きな熱狂そして信者を生むことにつながるのでしょうか? ゴールデンサークルは、この理由を「人間の脳の構造」に求めます(図2)。
人間の脳は進化の過程で、爬虫類の脳(脳幹)→哺乳類の脳(大脳辺縁系)→人間の脳(大脳新皮質)という発達を遂げてきました。
この脳の発達と、WHY/HOW/WHATのサークルが呼応しているというのです。実は人間の意思決定や忠誠を司(つかさど)るのは、外側の人間の脳ではなく内側の原始的な脳であり、だからこそWHYを語る企業が人々を引き付けるのだといいます。
筆者が考えるアウターブランディングの型も、このWHY→HOW→WHATのステップを重要視しています(図3)。
上記をあらゆるタッチポイントで徹底することで、企業のパーパスを一貫して伝え、外部にも”宗教”を広めることができるのです。
もちろん、そのベースとなるのはパーパスであるため、アウターブランディングの型は第2回で説明したパーパス構造と対応します。
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