FAQ運用、もう手作業はやめませんか? AI活用でいかに工数削減できるのか不動産DXのいまを知る(1/2 ページ)

» 2024年11月13日 07時00分 公開

連載:不動産DXのいまを知る

不動産業界のDX推進において活用するAI技術や先端技術との親和性、活用方法やその効果、将来性などについて、アットホームラボ代表取締役社長の大武義隆氏が解説する。

 近年、顧客対応の効率化や情報提供の透明性を求めて、業種を問わず、多くの企業がFAQ(Frequently Asked Questions)サイトを運営しています。FAQサイトを活用することで、迅速な情報提供が可能となり、「顧客満足度の向上」や「業務の効率化」「情報の透明性」など、さまざまなメリットがあります。

 一方、FAQサイトの運用には継続的な更新が不可欠で、「更新作業の負担」や「質の維持」が課題と考えられています。

 こうした課題の解消に期待されるのが、AI技術です。アットホームでは社内外のFAQデータ管理や顧客サポートの効率化を進めるため、FAQサイトにAI技術を導入し、実証実験を行いました。今回は、その実証実験の取り組みについて紹介します。

手間がかかるFAQ運営、AIでどう効率化を図れるか? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:大武 義隆(おおたけ・よしたか)

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アットホームラボ株式会社 代表取締役社長

アットホームに入社後、営業職・企画職などに従事。

2019年5月にアットホームのAI開発・データ分析部門より独立発足したアットホームラボにて、テクノロジー部門を統括し、不動産分野の課題解決に適したさまざまなAIモデルの企画を担当。23年4月より代表取締役社長に就任。


 アットホームでは、2015年にFAQサイトをオープンし、社内向けと社外向けに分けて運営を行っています。社外向けのFAQサイトには、提供しているサービスの内容や具体的な操作方法、トラブルシューティングなど、顧客である不動産会社や消費者からの問い合わせを受けるカスタマーセンターにこれまで寄せられた質問とその回答が集約されています。

 社内向けのFAQサイトには社外向けの内容に加え、社内規則などが掲載されています。この仕組みは、情報の透明性を高めるとともに、問い合わせ対応の効率化にも寄与しています。しかし、FAQデータの作成・更新にかかる人的負荷が課題となっていました。

生成AI活用でどれだけの工数を削減できた?

 こうした課題に対し、アットホームの生成AIを活用した作業効率化の取り組みについて紹介します。

 FAQデータの新規作成業務については、問い合わせに対する回答が適切か否かを「ラベリング」(判定)する業務と、実際にサイト上に公開する「FAQ作成業務」があります。

 ラベリングとは、質問に対する回答をA/B/C/Dの4つに判定します。回答精度に問題なければA、概ね問題はないが一部補足が必要なものにはB、補足がないと誤解を招く可能性があるものにはC、誤った回答はD――とし、ランクA以外は正しくデータを修正してFAQに掲載され、ユーザーが利用できるようになります。

 従来この判定作業は手作業で行っており、膨大なデータを扱う中では多くの時間を要していましたが、生成AIへプロンプトを入力・チューニングすることにより、月間約4.7時間の工数を削減できることが分かりました。AIは膨大な質問と回答データを精査し、自動でラベリングします。これにより、担当者の負担が軽減されるとともに、FAQサイトの更新頻度も向上し、より正確で迅速な情報提供が可能となります。

 そして、もう一つのプロセスであるFAQ作成とは、カスタマーセンターで受けた質問とその回答を、FAQサイトに掲載できる形式に整えることです。このプロセスにも生成AIの活用が見込めます。

 FAQサイトに掲載するには、カスタマーセンターが受けた質問とその回答を、文体や文字数を統一し、簡潔にまとめる必要があります。しかし、このプロセスも手作業では業務負荷が高く、対応が追いつかない状況が続いていました。

 そこで生成AIを活用し3カ月分の問い合せデータを使ってFAQを生成したところ、約20.2時間の工数削減ができ、カスタマーセンターのスタッフが他の業務にリソースを割けることが分かりました。

ラベリングとFAQ作成をAIに任せることで大幅な工数削減を実現(アットホーム提供)
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