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ドコモ「出向しながら起業できる」社内制度がすごい 応募者急増のワケ(2/2 ページ)

» 2024年11月28日 08時00分 公開
[武田信晃ITmedia]
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応募者は急増 2023年度だけで5社がスピンアウト

 最初のステージである「COLLEGE」では、事業アイデアを考え、検証を重ねながら内容をブラッシュアップする。MBAのようなプログラムをドコモが用意し、開発方法、財務管理、マーケティング手法なども学んでもらうなどインプットが多い段階だ。

 2つ目のステージ「CHALLENGE」では、逆にアプトプットが多くなる。メンターがつき、アドバイスを受けながら事業プランを磨いていく。実際に商品も作り、顧客のところに足を運び、フィードバックをもらう。中には「PMF」(Product Market Fit、サービスが市場に適切に受け入れてられている状態)まで行くケースもあるそうだ。

 その後、資金調達のためにVCへの営業活動をする。支援してくれるVCが決まったらドコモの投資委員会にかけ、独立して良いかどうか諮問にかけられるという。副社長以下、財務、人事の幹部を交えて会議をし、スピンアウトさせてもいいかどうかを判断する。「成長した暁には、彼らは上場してもいいし、ドコモがそこを買収することも考えます」

 この仕組み作りには、大きな効果があった。2023年のCOLLEGEとCHALLENGEには社員約1500人が参画。CHALLENGEでのアイデア数は573件。PMFに達したのは14件に及んだ。

 「ドコモは過去20年で4、5社のスピンアウトがありました。それが2023年度だけで5社がスピンアウトしました。2024年分も4月から募集が始まりました。前年に相当数が出たので、あまりないかなと思ったのですが、実際には500件ほどありました。それを40件ぐらいまで絞り、2025年2月に最終コンペで発表してもらいます。コンペの内容でGROWTHに進むかどうかの判断がされます」

 社内ベンチャーに応募する社員が増えた要因を聞くと「今までは、企業が成長しようがしまいが、給料が少し上がるくらいでした。しかし本当に上場できたら何億円、何十億円、何百億円という世界があり得ます。そこは全く違うと思います」と推察した。

なぜドコモがスタートアップ支援に取り組むのか?

 ドコモは、通信以外にもさまざまな事業を抱えている。スタートアップに取り組む意義については以下のように書かれていた。「事業オーナーが顧客への価値に向き合い、事業・経営者としての成長が伴う好循環を実現。将来のドコモグループにとっての柱となる事業をdocomo STARTUP を通じて生み出していく」。

 「経産省も言及していますが、日本で起業家が増えない大きな理由は、大企業が優秀な企業を囲い、その優秀人材を使って自ら新ビジネスをやってしまうからです。今度は大企業側から、人材・労働市場の流動性を高めていく必要があると思います。個人的にも連続起業家を日本の1つの職業として定着させるのが夢なのです。前からやりたいと思っていました」(原室長)

 なぜ連続起業家を育てたいのかを聞くと「モノの見方の角度が違うからです」と話す。

 「起業してバイアウトして終了……では、連続起業家を生み出す文化は根付きません。しかし連続起業家が取り組むと、その成功率は非常に高いものですし、英国では連続起業家が、新しく起業しようとする人を支える『投資のエコシステム』が確立しています。日本では成功したエンジェル投資家が生まれてこないので、そもそも起業家が育ちません。起業家を育てるには、まず母数を増やす必要があります。連続起業家のような経営者の育成は、日本にとって重要だと考えています」

 原室長はドコモの方法論を、会社の中だけにとどめておく気はないという。「母数を増やすべく、当社のやり方をできるだけ公開したいと思っています。これから企業内ベンチャーをやってみようという企業と一緒にやったり、ノウハウを提供したりすることには前向きです」

ドコモの事業と相性がいいのはAFFLIATEコース

 独立志向のSTARTUPコースとは異なり「AFFILIATEコース」は、ドコモの出資が50%以上の子会社となる。それゆえ、出向はあるが辞職はない。

 「例えば、顧客情報関連の企業が立ち上がったとします。これらはドコモの事業と関連性、親和性が高いものになります。その場合は、AFFILIATEコースとなります。なせならドコモの出資比率が高い方が、経営的にやりやすいからです。事業部にイグジットするパターンもあります」

 原室長はdocomo STARTUPの今後の展望を生き生きと語る。ドコモは創業時から、NTTグループの中では「亜流の事業」と言われてきた。だから社風としてスタートアップマインドがあるのかもしれない。「反骨心でビジネスをがんばってきた背景があるので、そういうマインドがあるのでしょう。だからこそ、iモードやお財布携帯などを、iOSやアンドロイドよりも先に始められたんだと思います」(原室長)

 一方で、ただ反骨心のみで動いていているわけではない。事業ごとにきちんとした見極めがなされている。

 2015年に新規事業として設立したドコモ・バイクシェアは、通信というコア事業の周辺事業として戦略的に立ち上げたため100%の子会社だ。一方で前述のReCuteはコア事業とは距離があり、成功するかどうかも分からない。それゆえに100%子会社での事業推進は困難だ。だが将来、事業が成功すれば買収が可能となり、新事業の柱にも成り得る。そういう点では、理にかなった仕組みだ。

 反骨心と理詰めで考えること。この2つがそろっているからこそ、ドコモは新しい形のスタートアップモデルを構築できた。あとは今後、ユニコーン企業を輩出できるか。docomo STARTUPが、本当の意味で成功するのかどうかに注目したい。

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