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ゴーン氏が全否定! 日産・ホンダの経営統合、注目点はどこなのか?カルロス・ゴーン元日産会長が批判

» 2024年12月26日 08時00分 公開
[中西享ITmedia]

 日産とホンダの経営統合は「お互いに補完するものがなく、経営統合してもシナジーは期待できない」──。2019年にレバノンに逃亡したカルロス・ゴーン元日産自動車会長は12月23日、日本外国特派員協会主催のオンライン記者会見に臨み、否定的な見方を明らかにした。

 産業的な視点から「(両社は)同じ分野に強く、同じ分野に弱く、重複している面が多い」と経営統合の問題点を強調した。会長をしていた2018年と現在の現状を比較して「販売台数で40%も減少、利益は実質的にゼロになっている。2023年に発表した再建プランも日産を変革するものになっていない」と指摘。先行きに悲観的な見方を述べた。

カルロス・ゴーン 1978年にフランスのタイヤメーカー、ミシュランに入社。96年にルノーの上席副社長、1999年に日産の最高執行責任者(COO)、2000年に社長、最高経営責任者(CEO)に就任して、日産の再建に当たる。17年に日産の役職を解任。18年に金融商品取引法と特別背任で逮捕、起訴。19年12月の保釈中に関西国際空港からプライベートジェットで日本を脱出しレバノンへ逃亡。公判は停止中。70歳(2016年10月アイティメディア撮影)

“ゴーン節”炸裂の会見 注目点として挙げたのは?

 「日産の経営の失敗により多くの資金が失われ、工場が閉鎖され、地域社会にも打撃を与えた。われわれはその犠牲者だ。この責任を誰が負うのか」

 ゴーン元会長は強い口調で述べ、退任してからの日産の経営を強く批判した。

 自動車業界を取り巻く情勢の注目点として中国の自動車メーカーの成長と、米国のEV専業のテスラを挙げた。「中国はいまや世界最大の自動車輸出国で急速に伸びている。またテスラは巨額の投資をして成長しており、日産とホンダは経営統合しても、中国メーカーとテスラとの間で、厳しい競争にさらされることになる。トヨタ自動車も同様だ」

 中国メーカーがEV市場を支配しようとしていることについて「これを防ぐには(中国製のEVに対して)関税を掛ける方法があるが、関税は一時的なもので解決策にはならない」との考えを明らかにした。米国のトランプ次期大統領が輸入製品に関税を掛けようとしていることに対しては「関税が掛けられると、市場にはインパクトを与えるだろうが、市場はグローバリズムと保護主義とのせめぎ合いのバランスにより決まってくるものだ」とも説明した。

(左から)日産自動車の内田誠社長、ホンダの三部敏宏社長、三菱自動車の加藤隆雄社長(本田技研工業のプレスリリースより)

 一部で指摘されている台湾の電子機器受託生産大手の鴻海精密工業による買収提案については「提案の中身は知らないが、とても興味深い」と前向きな考えのようだ。

 経済産業省の自動車業界に対する姿勢については「今回の経営統合は経産省との合意がなければ、あり得なかった」と述べ、同省の介入があったとの見方を明らかにした。

 ゴーン元会長にとって、自身がトップを務めていたころと比較して業績が落ち込んだ中での統合プランだけに、全否定の意見表明となった。

 日産からすると、ゴーン元会長は「過去の人」だ。だがゴーン元会長がトップを務めていた20年近い間に、一時的ではあるが再興(ルネサンス)を感じさせた時期があったのは間違いない。それだけに、その後の経営陣の力量不足と先見性がなかったと言わざるを得ないだろう。

本牧埠頭を視察するゴーン氏(2011年7月、Wikipediaより)

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