――dentsu JapanはAX、BX、CX、DXと、4つのトランスフォーメーションを打ち出しています。2024年度の第3四半期は2.3%のオーガニック成長でしたが、足元の業績についてどのように評価していますか。
おかげさまで順調にきていると思います。当グループの広告事業も、市場成長率以上になっていますし、広告を支援するAXを除くBX、CX、DXの領域もそれぞれ2桁(けた)成長に近い伸びを示しています。特にBXはコンサル的な領域で、今後も高い成長を見込んでいます。
当グループは目指すべき姿として「Integrated Growth Partner」を掲げています。複雑化・高度化する企業課題から本質的な課題を発見し、これを解決に導くパートナーとして、統合的なソリューションを提供しています。われわれが提供する広告サービスも広義にはBXの手段にすぎず、AXとBXの垣根はどんどんなくなってきています。
――電通のコピーライターの思考プロセスを学ばせた生成AIの「AICO」などの開発も進められていますね。
初代AIコピーライターのAICOを2016年に開発し、2024年には進化を遂げた「AICO2」が誕生しました(関連記事)。これにより、われわれが広告のときに考える訴求ポイントである「What to Say」と「How to Say」を分けることも可能になりました。例えば「この水の訴求ポイントは何ですか?」と聞くと、訴求したい候補をいくつも出し、それをまず選ぶ。その上でHow to Sayという「どう言うか」の部分を考えていきます。普段電通のコピーライターが考えている思考プロセスを学ばせたら、このようになりました。
――経営トップとしてAIやDXを、どのように会社の成長や売上向上につなげていく考えでしょうか。
3つあります。1つ目に、AI関連サービスの提供です。AICO2の他に「AIQQQ STUDIO」(アイキュースタジオ)というサービスを提供しています。これはAIとクリエイティブを掛け合わせ、クライアントの事業やサービス開発を支援するサービスです。また、AIを使ってマーケティングをより効果的にするソリューションブランドとして「∞AI」(ムゲンエーアイ)を掲げ、さまざまAIソリューションを提供しています。
AIQQQ STUDIOは新規事業開発、AICO2はコピー制作といったように、AIソリューションを併用することで、クライアントへの提案の質を上げています。いろいろなプランニング、企画制作運用の全領域にAIを取り入れ、クライアントへの提供価値を高めています。
2つ目は、われわれ自身の効率化です。例えば、AIに代替されることで「コンサル経験3年目までの人材の業務がなくなる」といった話がありますが、その業界の分析や、基本的な戦略をAIによって構築できるようになってきたこともあり、われわれの業務効率化もすごく進んでいます。
3つ目は、クライアントへのAI導入支援サービスです。AIをいかにして使い、ビジネスを高度化していくか、ですね。これら3つの領域に注力し、それぞれの高度化を図っています。
AI導入の効果として、イメージ的には100のものが50ぐらいの時間でできることを目指しています。そして空いた50の時間を、人間にしかできない作業に使いたいと考えています。AIは過去のデータから学んで動いているものですから、未来を考える部分はわれわれ人間が得意とする部分だと思います。余った時間を生かし、さらにクライアントへの提案の質を高めていくために、人間とAIの共創を積極的に進めています。
――貴社のコンサル業の割合や売上高も増えています。AI開発はここでも強みを発揮しているのでしょうか。
そうですね。例えば「この商品の広告を作ってくれ」と言われたときに、他の商品はどういう売り上げになっているのか。他の企業はどうなのか。例えばこの商品を持っている企業の経営課題は何か、といったことを知っていた方が、提案がいいものになります。一つの商品の広告を制作する上でも、クライアント企業の経営課題があり、事業課題があり、マーケティング課題があり、広告そのものへの課題もあります。経営課題を知っている方が、広告をソリューションとして良いものにできるわけです。
――AIの導入が始まる前は、どのように広告を制作していたのでしょうか。
昔は本当に人の力で、切磋琢磨しながら作っていたと思います。今は、そのチームの中にAIが入っている感じです。例えば人間4人のチームに「一人のAI」が入ることで「5人」になりますよね。こうすることによって人間のアイデアの幅が広がったり、深まったりする感じです。
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