――DXという観点では、日本企業の課題をどのように見ていますか。
DXに関連するクライアント企業からの引き合いは大変好調です。その中で大切にしているのが、DXが目的にならないようにすることです。数年前からDXブームが始まったことで、とりあえずDXをして、何かをデジタル化しようとする企業があります。でもそれはクライアントのビジネスの成長に、決してインパクトを与えるものではありません。
例えば、企業のある部門だけの判断で全社向けのシステムを開発してしまったがために、結果として、社員の誰もそのシステムを使わないといった事象が起きています。
やはり肝心の“人”が使わなければ、それは宝の持ち腐れになってしまいます。そのためには、最初にDXの目的を何に設定するのか。トランスフォーメーションによる事業成長を目的にすること、つまりDXのパーパスやミッション、ビジョンを決めた上で導入しなければなりません。かつ、それがその会社の中で活用されて、事業成長に寄与するものである必要があります。
DX導入における課題はここだと思います。DX導入そのものが目的になっていると、変革が起きません。われわれも「DXをやってみたんだけど、社内活用がなかなか進みません」といった相談を受けることがあります。社員の人たちが活用したくなるようにするにはどうしたらいいか。そのためにどのようにカルチャーを変革していくかを一緒に考えていきます。
われわれがDXのコンサルで評価されている点もここです。「人の心が動く」「人が動く」といった言い方をするのですが、結局DXは企業変革の手段に過ぎません。社員が動かないと、そのDXにかけたリソースも無駄になります。そして社員が動くためには、社員の心が動かなければなりません。ここはわれわれが長年、広告で培ってきた人の心を動かす力やクリエイティビティがすごく生きてきます。だからこそ、われわれがいま評価いただけているのだと思います。
――佐野社長の話を聞いていて、dentsu Japanは「クライアントの成長」を大事にしたビジネスモデルなのだと感じました。やはりそこが電通のビジネスの肝なのでしょうか。
そうですね。クライアントとはWin-Winで、サステナブルな関係であるべきだと思います。クライアントの成長に貢献できていないのに、われわれだけがもうかっていては、サステナブルではありません。われわれのクライアントの中には、100年以上にわたって担当させていただいている企業もあります。
やはり、クライアントがきちんと成長し、その結果われわれも対価をいただく。その対価でわれわれがテクノロジーや人に投資して、われわれのケイパビリティ(強みや優位性)が上がる。それをまたクライアントに提供してクライアントが成長する。こうしたサイクルが回らないと、関係は100年も続かないと思います。
編集部より:営業出身の佐野氏には次回、長年にわたって培ってきた「営業の極意」を聞きます。お見逃しなく!
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