バーチャルYouTuber(VTuber)市場で急成長を遂げた「にじさんじ」のANYCOLORや「ホロライブ」のCOVERも、上場企業として大きな評価を得ているが、こちらでも所属VTuberの卒業が相次いで確認されている。
VTuberはタレントの2D・3Dアバター、いわゆる「ガワ」の権利を事務所が押さえていることから、タレントが辞めにくいという特異性があると期待されていた。
しかし、最近では両社で人気を集めたVTuberが引退し、個人や別の事務所のVTuberとして全く異なるガワで「転生」し、即座に数十万人の登録者の確保に成功する事例が散見される。いくらガワの権利を押さえていたとしても、「中の人」に魅力を感じるファンが付けば、事務所にとって独立防止策にはなり得ない。
両社ともに安定的な黒字であり、かつほとんど無借金経営だ。資金調達という上場の本旨に立ち戻るならば、あえて上場を継続するメリットは相対的に高くないといえるだろう。
近年は「上場=成功」「非上場=失敗」といったイメージが徐々に崩れつつある。
永谷園や大正製薬、ベネッセといった大手企業でさえ、ビジネスの性質や収益構造に合わせて上場廃止を選択し、非上場企業に移行している。資金調達の手段が多様化したことや、上場を維持するコストの高まりなどもあり、企業が長期的に価値を生み出せるかどうかの判断において上場・非上場というくくりは昔ほどの意義を持たなくなったと考えられる。
上場企業は、株主の利益を重視しながら四半期単位での短期的な業績拡大を求められる傾向にある。これは先読みの難しいビジネス環境や先行投資がかさむプロジェクトでは、必要以上に企業価値が安くなる可能性を示唆している。芽が出るまでに10年単位の下積みが必要だったり、すぐに人気になっても一発屋で萎む可能性があったりするビジネスは評価されづらい。
こうした状況を踏まえると、UUUMの上場廃止が同社にとってプラスに働く可能性は十分に考えられる。非上場企業になれば、厳格な開示や株価対策に追われる必要性が減り、長期的な視点で投資しやすくなる。
例えば、新規クリエイターの発掘や育成に時間やリソースを投下したり、グループ会社を通じた受託制作領域において新たなビジネススキームを模索したりといった挑戦をしやすくなるはずだ。
たとえ短期的に収益が落ち込む局面があっても、経営陣が新たな可能性を重視しながら事業を継続できるのは、非上場企業ならではの強みといえる。
以上の流れを踏まえると、UUUMの上場廃止は「経営の失敗」と断じるには早計だ。
芸能事務所の本質的なリスクを内在させながらも、同社にはまだ十分な「復活エンジン」が備わっている。そのエンジンを最大限活用するためには、市場の短期的なプレッシャーから離れ、経営判断を柔軟かつスピーディーに行える非上場化がむしろ有利に働く可能性がある“真っ当な戦略”と評価できる。
もちろん、上場したままでも成果を出す企業は多いが、ただでさえ安定している大手企業でも非上場化に踏み切る昨今の環境を踏まえると、UUUMのようにタレント依存度の高い芸能事務所ビジネスの場合は、非上場のほうが理にかなっていると考えられる。
業界の急激な変化に柔軟に対応し、クリエイターの才能とファンコミュニティーを最大限に活用する姿こそが、今後のUUUMに求められる「復活」の形ではないだろうか。
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