そして一般に、モノやサービスの値上げは消費者に説明して理解していただく必要がある。しかし鉄道は利用者ではなく、国に説明する必要がある。なぜかというと、もともと鉄道事業は「国が免許を与える事業」だったからだ。
鉄道を建設するときは、国に申請して免許を得る必要があった。国にとって鉄道は政策に必要だったし、むやみやたらに線路を敷いて競合すれば運賃の値下げ競争につながり、過度な値下げをすると、安全対策費用が削減される恐れがある。それでは、いずれ重大な事故につながる恐れがある。大勢の人々が命を落としケガをする。
だから明治時代からJR発足までは、官営鉄道や国鉄に並行する鉄道路線を計画しても免許は認可されなかった。有望な区間があったときは、競合会社より早く書類や資本を集めて、先に免許を取る必要があった。現在は規制緩和で許可制になったけれども、やはり国への届出は必要だ。
その結果、鉄道は地域での独占企業になった。ほかにライバルがいないから、沿線の人々はその鉄道を利用するしかない。そうなると独占企業の悪いところが出てくる。値上げをすればもうかるわけだ。これでは国民の生活の役に立たない。だから国は鉄道会社に対して運賃を規制したい。そこで鉄道会社は運賃の値上げを申請し、国は審査して認可または不認可とする仕組みとなった。
値上げに関しては認可が必要だけれども、値下げの認可は不要だ。営業政策上の割引は届出だけでいい。認可を受けた運賃以下であれば自由に値引きできる。つまり国の認可は「上限運賃」となる。会社を大損させるような値下げはしないだろうという判断が国にはある。もっとも過当な値下げについては指導することになる。
鉄道の「運賃」つまり乗車券代は、上限運賃の認可を国に得る必要がある。「料金」にあたる特急券や指定席券は届け出のみで良い(出典:国土交通省、第5回 交通政策審議会 鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会)
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