山手線が39年ぶりに運賃アップ、JR東日本が発足以来「初値上げ」の意味杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

» 2025年02月17日 10時35分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 申請が認可されると、1987年にJR東日本が発足してから39年間で初めての運賃値上げとなる。「あれ? これまでも値上げってあったよね?」と思ったかもしれない。確かに1997年、2014年、2019年に運賃は上がっているが、これは消費税の転嫁によるものだ。

 記憶に新しいところでは、2023年3月に電車特定区間で、通勤定期運賃の値上げと「オフピーク定期券」という値下げを実施した。オフピーク定期券は、平日の混雑時間帯を除く乗車に限り割引率が適用される。平日の混雑時間帯に乗車するときはIC普通運賃がかかる。普通運賃も電車特定区間においてバリアフリー料金として10円が加算された。

オフピーク定期券は当初の予想より販売数が少なかったようで、2024年8月にさらなる値下げが行われた(出典:JR東日本、「オフピーク定期券」を値下げし、新たなプロモーションを展開します!

 このときの通勤定期券の値上げは、オフピーク定期券の割引分があるため、定期運賃収入全体としては増収にならないという指摘があった。またバリアフリー料金はホームドア、エレベーター、トイレのバリアフリー設備に使われる。だからJR東日本の増収にはならない。実際、バリアフリー料金は設備投資額を考えると、JR東日本の持ち出しのような気がする。

 もっとも利用者からすれば、どれも運賃の値上げに見える。だから、いまさら「開業以来初の値上げ」という表現は、JR東日本からすれば納得しがたいだろう。正しくは「JR東日本が増収を目的として運賃を値上げするのは初めて」となる。39年間も税抜き運賃を据え置いてガマンしていた値上げ分がドンと加算される。特にこれまで割引運賃だった「電車特定区間」と「山手線内」の割引がなくなるため、値上がり幅が大きい。

大手私鉄や地下鉄と競合する区間を「電車特定区間」「山手線内」とし、割引運賃を設定していた(出典:JR東日本、運賃改定申請のお知らせ

 本記事ではJR東日本が開業以来、なぜ税抜き運賃の値上げをしてこなかったか、なぜいきなり大幅な値上げを発表したか、を考えてみたい。

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