「外国人観光客=悪」の構図は本当か? ニセコの現実と報道の落とし穴スピン経済の歩き方(7/8 ページ)

» 2025年02月19日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本経済を支えている観光産業

 まず、これをなかなか認めたくない人が多いが、既に「観光」は日本経済にとってなくてはならない基幹産業になっている。

 10年前、こういう話をすると「いや、日本はものづくりで復活だ」とか「これからはロボットだ」とか笑われたものだが、この10年で訪日客消費は年換算で10倍に成長した。ここまで安定的に成長している産業は他にない。フランスやタイという観光大国を見れば分かるだろうが、地震やパンデミックがあって落ち込むことがあっても、しばらくすれば回復して、安定的に成長しているのが観光産業なのだ。

 この観光産業が日本経済を支えていることが如実にあらわれているのが、2024年の訪日外国人旅行消費額だ。観光庁によれば過去最高の8.1兆円(速報値)、訪日外国人観光客数が過去最多となった10〜12月期だけでも2.3兆円に達する。

訪日外国人旅行消費額(出典:官公庁)

 内需が7割を占める日本経済にとって、このインバウンド消費がどれほど貢献したのかが分かるのが、内閣府が2月17日発表した2024年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値だ。

 物価変動の影響を除いた実質GDPで前期比0.7%増、年率換算で2.8%増。プラス成長は3四半期連続である。

GDP成長率(出典:内閣府)

 よく「GDPがプラスになっても景気が回復した気が全くしない」という声を聞くが当然だ。個人消費はずっと冷え込んだままだ。にもかかわらず、GDPが多少上向いてきたのは、訪日外国人観光客がコロナ前の水準を上回って、観光地で景気良くカネを落としていることが大きい。

 外国人観光客を日本から追い出せば、このカネはごそっと消える。個人消費の冷え込んだ日本人では地方経済は支えられない。コロナ禍のように、サービス業の廃業や失業が急増する。

 だからこそニセコのオーバーツーリズムのような問題を放置してはいけない。本連載でも繰り返し述べているが、観光の一極集中は、国や自治体が主導して「ゾーニング」などで解決していく。新たな観光地や観光ルートを整備し、集客することで「外国人観光客の分散」を図るのだ。

 ニセコや京都のように「右も左も外国人観光客だらけ」の場所がある一方、外国人観光客がそれほど来ていないけれど、ポテンシャルのある観光地に誘導することで、地域経済を活性化させる。

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