日本にも「旅の恥をかき捨て」という言葉があるように、昔から不届き者の観光客は問題になっていた。高度経済成長期は特にひどく、観光地の乱開発や自然破壊が問題になった。
バブル期になると、その問題がそのまま世界へ「輸出」される。当時の日本人は金にものをいわせて、世界中の観光地をわがもの顔で歩きまわって、ブランドやその土地のグルメを爆買いした。
その暴れっぷりから、米国の週刊誌『TIME』は日本人を「世界を荒らすニューバーバリアン」と評して特集を組んだ。自然保護のため立ち入り禁止となっている場所にズカズカ入って記念写真を撮り、欧州ではミサ中の教会でフラッシュ撮影してヒンシュクを買った。観光地での土地や建物の買い占めも激しく、ハワイの議会では「このままでは日本にワイキキが乗っ取られる」と日本人対策が真剣に議論された。
今、われわれが中国人観光客に対して顔をしかめていることのほとんどは、かつて自分たちが通ってきたことばかりなのだ。
繰り返しになるが、「だから外国人観光客は悪くない」などと言っているわけではない。自分たちがこれまで手を付けてこなかった問題まで、反論する機会も手段もない「外国人観光客」にだけ押し付けて、全ての災いの元のように悪印象を広めているのが、「報道機関」としてフェアではないといっているのだ。
なぜ外国人観光客への報道がフェアでないといけないのかというと、マスコミ、特に映像メディアが大衆を煽動する力があることは、ナチスドイツが証明しているからだ。つまり、偏った「外国人観光客問題」報道は、ピュアな視聴者や読者に「外国人観光客さえいなくなれば問題は解決だろ」と社会問題を単純化させて「憎悪」を煽(あお)ってしまうのである。
分かりやすいのは、スペインだ。
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