ニセコだけでなく、富良野、富士山、築地場外市場、浅草、金閣寺などの有名観光スポットに外国人観光客が「集中」しすぎて、地域住民にさまざまな不利益をもたらしているのは事実だ。
が、実はそこで「外国人観光客問題」として取り上げられているものの多くは、もともと日本社会が抱えていた問題や、これまで日本人観光客が引き起こしてきた問題の延長線であることが多い。
「外国人観光客は悪くない」という話ではなく、あれもこれもみんな外国人が悪いという感じで、「身に覚えのない罪」まで被せられているのだ。
分かりやすいのは、先ほどのニセコの介護事業所閉鎖問題だ。ニュースでは、外国人観光客が大挙として押し寄せたことで「賃金格差」が生まれて「従来の地域コミュニティーをゆるがしかねない事態」になったという。要するに、外国人観光客さえ来なければ、今ごろどの介護事業者も職員たちがみんなハッピーで働いているというワケだ。
ただ、これは典型的な「スケープゴート」だ。
もともと日本の介護ビジネスは大規模化・集約化が進んでおらず、個人経営で従業員10人程度の小規模事業者が圧倒的に多い。そのため低賃金しか払えず、慢性的な人手不足に苦しんでいた。東京商工リサーチによれば、2024年の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産は過去最多の172件(前年比40.9%増)。その大多数は個人経営で、従業員は10人未満だ。
倶知安町で2つの事業者が閉鎖した当時の北海道新聞を確認すると、ヘルパー数はそれぞれ5人と4人。しかも、働いているヘルパー側の高齢化も進んでいたという。
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