今、かの国では「反ツーリズム」(反観光)運動が盛り上がっている。バルセロナなどの有名観光地では地域住民が抗議デモなどを行い、人気観光エリアで食事中の観光客に水鉄砲で水をかけたり、「観光客は帰れ」と叫んだりする人もいる。
なぜこんなにも外国人観光客への憎悪が高まっているのか。ポイ捨てやマナーがけしからんという次元の話ではなく、根底には「なぜわれわれがこんなに貧しい生活を強いられなくてはいけないのだ」という強烈な怒りがあり、この苦境を引き起こしたのが「観光」とされているのだ。
「スペインのホームレスは2012年以降で24%増えて2万8000人に達したことが政府統計で分かる。スペイン銀行(中央銀行)のリポートによると、賃貸住宅に住む人の約45%は貧困に陥るか社会から疎外されるリスクがあり、この比率は欧州で最も高い」(ロイター 2024年7月13日)
もちろん、都市部では多くの外国人観光客が押し寄せて家賃が上昇しているなどの問題もあるが、そもそもスペインでは貧困、移民など社会問題が山積している。
スペイン経済は観光が支えている面もあるので、外国人観光客を追い出しても何の解決にもならないどころか事態は悪化する可能性が高い。しかし、それでも人々は「外国人観光客」への憎悪を向けずにはいられないのである。
これは日本も同じだ。経済の低迷が長期化して多くの人が「貧しさ」を実感している。一方で、ニセコのような観光地では楽しそうな諸外国の人々があふれ、3万円のウニや1万円の海鮮丼を頬張っている。憎悪を向けるなというほうが無理な話だ。
今回のような「外国人観光客によって街が壊れた」報道をトリガーに、スペインのような大規模な外国人観光客排斥運動が起きてしまうのではないかと懸念している。
「外国人観光客の安全なんかより、日本人の生活や安全を守ることを優先すべきだろ」というお叱りもあるだろう。ただ、日本人の生活や安全を守ることを真剣に考えると、やはりこのような動きはよろしくない。
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