デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。
2023年1月から運用がスタートした電子処方箋。前回の記事では、筆者が実際に電子処方箋サービスを利用して見えてきた課題について解説しました。
関連記事:電子処方箋、なぜ広がらない? 実体験から読み解く医療DXの課題
今回も、電子処方箋を用いて処方薬をオンライン購入できる「Amazonファーマシー」の利用体験を通じて、その現状と課題を見ていきたいと思います。前回と異なり、2回目のAmazonファーマシー利用時は手続き自体、順調に進んだのですが、その後、思わぬ問題が発生してしまいました。
20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。
現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」顧客体験(CX)部会リーダーなどを兼務する。
公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇
公式X:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質: 小売業5.0』
2025年1月、筆者は定期受診の際にもう一度、電子処方箋をクリニックで発行してもらうことにしました。前回(2024年11月)にAmazonファーマシーを利用した際、電子処方箋の引換番号が「使用済み」扱いとなるトラブルでオンライン服薬指導を断念したため、今回はスムーズに進めたいという思いがありました。
主治医に前回の失敗談を話したところ、「電子処方箋まわりで分からないことがあると、チャットで問い合わせても回答が早くて翌日になる場合が多い。どうしてもリカバリーが遅れるので困っている。しかしながら、患者さんにメリットがあるなら積極的に取り組みたいので、ぜひフィードバックをください」とのことでした。
電子処方箋は紙の処方箋より管理がシステマチックな分、設定や運用で不具合が起きると柔軟な対応が難しく、問い合わせを含めた対応に時間がかかる場面があるようです。現場としても一つ一つ手探りで学んでいる最中、という印象を受けました。主治医の患者に対する思いにも、深く感銘を受けました。
今回、筆者がAmazonファーマシーを利用するにあたり、まずは薬局選びをどうするか考えました。前回は祝日に受診したため、緊急時に車で行ける店舗を選んでいましたが、今回は平日で日程にも余裕があります。そこで、薬局リストの中から、薬の送料が無料の店舗を選択してみたのです。
実際にオンライン服薬指導を受けたところ、「現在キャンペーンで配送料を無料にしている」と薬局側から説明がありました。筆者は店舗側が忙しい時間帯や時期にあわせ、送料を変動させることで処方箋受付をコントロールする戦略も可能なのではないかと感じました。
医療機関の使命から見れば賛否はあるかもしれませんが、ビジネス的には余裕のある時間帯には送料無料で処方箋を集め、忙しいときは送料を上乗せして受付枠を絞るといった平準化の考え方も十分あり得るように思えます。
Amazonファーマシーの利用の流れを簡単に紹介します。
AmazonアプリからAmazonファーマシーを探す際は、検索バーに「Amazonファーマシー」と入力するのがもっとも手っ取り早い方法です。サービス開始当初はトップにバナーが出ていましたが、現時点では入口が分かりづらい印象があります。今のところ利用頻度が多くないのでしょう。
ページにたどり着けば、画面指示に従うだけで比較的スムーズに予約を取れますが、以下のような点はやや分かりにくいと感じました。
オンライン服薬指導を申し込むにあたっては、マイナンバーカードと電子処方箋の引換番号の2つが必要です。マイナンバーカードはオンライン資格確認の際にスマホで読み取るために必須で、引換番号は医療機関で渡される「処方内容(控)」に6桁で記載されています。紙そのものは単なる控えで、実際の処方箋情報はオンライン上で管理されている仕組みです。
なお、薬局の実店舗にマイナンバーカードを持っていき、この引換番号を告げれば紙の処方箋同様に実店舗での服薬指導を受けて薬を持ち帰ることも可能です。
前回と違い、今回は引換番号が正常に使えたため、Amazonファーマシー上で問題なく服薬指導を受けられました。最終的には薬局から自宅に薬が郵送され、電子処方箋を利用したオンライン服薬指導と自宅配送が完結した形になりました。
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