この記事は、『イシュー思考』(和氣忠著、かんき出版)に掲載された内容に、かんき出版による加筆と、ITmedia ビジネスオンラインによる編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
ビジネスでもプライベートでも解決したい課題は山ほどある。そんなときに活用できるのが「イシュー思考」だ。具体的にどのような課題がイシューとなり得て、「イシュー思考」で解決できるのか。マッキンゼーやアクセンチュアのコンサルティングを経て独立起業し、『イシュー思考』(かんき出版)を執筆した和氣忠氏が、具体的な例を挙げて解説する。
言語化された目指す姿と、現状とのギャップを埋めていくのが問題解決です。
問題をどのような視点から解くのか、どの方向へ解くのかという解き方のアプローチを明確にしてイシューを特定します。イシューであるか否かの判断基準は、(1)解き得るか、そして(2)解いた結果のインパクトが大きいか──の2点です。
特定されたイシューが解き得るのかは、「どのような視点からどの方向へ解くのか」という解き方のアプローチによります。そして、解いた結果のインパクトが大きいかは、目指す姿に対して現状との差分が十分に大きいかによって決まります。
具体的な解説がないと分かりにくいと思いますので、「明後日に運動会が予定されている中学校のケース」を例として考えてみましょう。
この中学校の地域では、運動会の実施を予定している明後日、大型台風に襲われる予報が出ています。ここでの目的は(当然ですが)「運動会を実施する」です。
目指す姿として2つのパターンが考えられます。
<パターン1>台風が来襲しないようにして、予定通り運動会を実施する
<パターン2>台風が来襲したとしても、なんとかして運動会を実施する
それでは、イシューであるか否かの判断基準に照らして考えましょう。
パターン1は、来襲予報が出ている台風を人間の力で来ないようにすることは不可能ですので、解き得ません。従ってイシューではありません。
一方パターン2は、台風が来襲することを前提として、なんとか運動会を実施する選択肢は複数あり得ます。例えば、規模を縮小して屋内で実施する、あるいは、日程を翌週へ延期する、などが考えられます。従って、解き得ます。また、運動会を実施することによる学生やクラス、さらに、保護者に対するインパクトは大きいことが見込めるため、パターン2はイシューであるといえます。
このパターン1とパターン2の違いは、「どのような視点から、どの方向へ解くのか」という解き方のアプローチの違いによるものです。
パターン1は「台風が来襲しないようにする」という視点から、台風を来ないようにさせるので、予定通りの規模と場所で運動会を実施するという方向で解いていくものです。一方、パターン2は「台風の来襲は仕方ないので、台風来襲を所与の前提とする」という視点に立って、台風が来襲してもなんとか運動会を実施する方法を案出する方向で解いていくものです。
パターン1の例は、明らかに不可能なので、このような不可能な視点からイシューを設定することはないはずですが、日常のビジネスや政治行政、家庭のシーンでは往々にして起こっています。このように、「台風来襲が予報されている中で、運動会をどうするか?」という状況においても、どの視点からどの方向へ解いていくのかの違いで、解き得るか否かが分かれます。
イシューを特定する際には、どのような視点からどの方向へ解いていくのか、解き方のアプローチが解き得るものとなるように意識して進めてください。
ここで、このケースにおける「そもそもの目的」について一つ補足します。
はじめに、目的を「運動会を実施する」こととしましたが、果たして「運動会を実施する」ことが、「そもそもの目的」でしょうか? 運動会を実施した結果、どんな状況に至りたいのでしょうか?
この運動会実施を経て至りたい状況が、「そもそもの目的」でしょう。
例えば、クラスの一体感や達成感を得られること、新しい人間関係が築けること、仲間の長所を発見すること、保護者の学校に対する理解が深まること──などが考えられます。
とすると、台風が来襲しても、運動会の規模の調整や日程変更など、やりようを工夫して、この「そもそもの目的」を達成できます。ここでも、「そもそもの目的」が、問題の解き方の設計や判断のよりどころとなることが分かります。
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