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感情データでオペレーターの「SOS」をキャッチ 「スカパー!」コンタクトセンターの改革評価業務「400時間→120時間」に削減(1/2 ページ)

» 2025年03月12日 07時00分 公開
[大久保崇ITmedia]

 コンタクトセンター業界では深刻な人材不足が続く中、応対業務がますます複雑化している。デジタル化が進み、簡単な問い合わせはチャットボットなどで自己解決できるようになった一方、センターに寄せられる相談はより専門的で難度の高いものが増加。オペレーターの精神的負担は年々大きくなっているという。

 こうした課題に対し、有料多チャンネル放送「スカパー!」のコンタクトセンターを運営するスカパー・カスタマーリレーションズ(品川区)は、「感情解析データ」を活用した新しい支援ツール「感情カルテ」を開発、社外にも提供している。

 オペレーターの心の変化を体温計のように可視化し、適切なタイミングでのサポートを可能にするこのツールについて、ビジネスプロセスソリューション部プロダクトマネージャー・中島健氏と同部の宮川正俊氏に話を聞いた。開発の背景から実際の効果、そして「ヒト」を重視するコンタクトセンター運営の在り方とは。

「スカパー!」のコンタクトセンターで実際に使用されている「感情カルテ」、いったいどんなサービスなのか(提供:スカパー・カスタマーリレーションズ)

コンタクトセンター、ヒトの仕事が複雑化

 近年、労働人口の減少と人手不足が深刻化する中、コンタクトセンター業界も大きな変化に直面している。

 「デジタル化の進展により、簡単な手続きや問い合わせはお客さまが自己解決できるようになりました」と宮川氏。「その結果、オペレーターには複雑で専門知識を要する難しい問い合わせが集中するようになっています。より高度なコミュニケーション能力と専門性が求められるようになりました」と説明する。

 こうした変化は、オペレーターの負担増加だけでなく、管理者であるスーパーバイザー(SV)の業務にも大きな影響を与えている。通常、1人のSVが複数名のオペレーターを担当し、その育成と支援にあたるケースが多いが、業務の高度化に伴いその負荷は増す一方だ。

 「コンタクトセンターの最大の課題は、オペレーターの離職防止と応対品質維持の両立です。SVには限られた時間内で効率的なオペレーター支援が求められています」と宮川氏は現場の実情を語る。

感情データ活用 3つの機能

 こうした課題に対し、スカパー・カスタマーリレーションズが開発したのが、音声から感情を数値化し、可視化するソリューション「感情カルテ」だ。

「感情カルテ」の3つの機能(提供:スカパー・カスタマーリレーションズ)

 「感情カルテ」は大きく3つの機能で構成されている。まず「ココロの体温計」は、オペレーターのモチベーションを可視化する機能。個人の平均値を「平熱」として、日々の感情の変化をモニターし、心理状態に異変があればSVがサポートに入るタイミングを知らせる。

 次に「ココロのタッチポイント」は、顧客満足度を全件自動で取得・評価する機能。同社では従来、応対後の顧客にアンケートを送ることで顧客満足度を調査していたが、回答率は数%にとどまっていた。音声から感情を解析することで、全ての応対の品質を数値化できる。

 さらに「ココロのスキルチャート」は、問い合わせの種類別にオペレーターの苦手分野を可視化。通常、新人研修では一律の内容を提供するが、この機能により個人ごとに必要な研修を効率よく提供できるようになる。

 「従来、応対品質を評価する際は応対の録音を聞き、当社の基準に合わせてスコア化するなど、比較的企業視点での評価になっていました。感情データを活用すれば、オペレーターに実際のお客さまからの評価を伝えられると考えました」と中島氏は説明する。

感情データを用いることで得られる効果(提供:スカパー・カスタマーリレーションズ)
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