「氷河期世代」はなぜ報われないのか 国の支援では解決できない、これだけの理由スピン経済の歩き方(1/8 ページ)

» 2025年03月19日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。

 1990〜2000年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った、いわゆる「就職氷河期世代」に対して国がもっと支援すべきだという声が盛り上がっている。

 分かりやすいのは、TBS系の報道番組『news23』が放映した『「初任給12万円」「内定取り消し」…“報われない”就職氷河期世代 どう支える? 若い世代に深刻な影響が…』(TBS NEWS DIG 3月14日)である。

 VTRには47歳で転職活動中の人や45歳で無職になってウーバーイーツ(Uber Eats)の配達員などをして生計立てる人、50代で非正規公務員として週4日働いて手取り12万円の人などが次々と登場して、新卒からの現在に至る“報われない半生”を振り返っていた。同世代の人間(筆者)として、胸が締め付けられるような思いで視聴した。

 これを受けて「TBS NEWS DIG」アプリの中で「就職氷河期世代」へ支援は必要かとアンケートを取ったところ「必要」(41.6%)と「事情を勘案し支援すべき」(42.7%)を合わせると、なんと8割以上の人が、何かしらの支援が必要だと考えていた。

 この「就職氷河期世代に愛の手を」というムードは、実は2024年から盛り上がっている。例えば、厚生労働省では「就職氷河期世代の方々への支援」という特設Webサイトを開設し、ハローワークのほか、49歳まで利用できる「地域若者サポートステーション」「ひきこもり地域支援センター」など各種窓口を案内している。

「就職氷河期世代の方々への支援」(出典:厚生労働省)

 ただ、個人的には就職氷河期世代が貧しいのは「国の支援」などで解決できるものではない、と考えている。

 「はいはい、自己責任論ね。そうやって弱者を切り捨てる時代じゃないんだよ」というお叱りが飛んできそうだが、筆者が「国の支援」を否定しているのはそういう観点ではない。

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