リテール大革命

SHEIN、Temuだけじゃない 中国発ファスト雑貨のビジネス戦略を深掘り 超高速サイクルどう実現?がっかりしないDX 小売業の新時代(1/2 ページ)

» 2025年03月27日 07時00分 公開
[郡司昇ITmedia]

連載:がっかりしないDX 小売業の新時代

デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。

 以前、中国発の生活雑貨大手MINISO(メイソウ)のインド市場におけるフランチャイズ戦略について考察しました。

関連記事:ユニクロやDAISOにそっくり? ナゾの中国発雑貨「メイソウ」が、世界中で高速出店できるワケ

 インドの厳しい外資規制に対応した同社のビジネスモデルは、海外展開を目指す日本の小売業にとっても学ぶべきポイントが多くあると紹介しました。

 筆者はインド視察の際、MINISOとは別に、ポップなデザインのYOYOSO(ヨヨソウ)という雑貨店も見かけました。インド企業かと思って調べてみたところ、MINISO同様に世界進出を果たしている中国企業でした。

 今回はYOYOSOのビジネスモデルを考察します。同社はデジタル技術を生かし、高速サイクルのビジネスモデルを確立。同じく中国発の超ファストファッションブランド「SHEIN」(シーイン)や「Temu」(ティームー)の雑貨版とも言えるビジネス展開を実現しています。

 同社から日本の小売業が参考にできそうな部分を紹介します。

中国発雑貨店YOYOSOのビジネス戦略から日本の小売業が学べるポイントとは?(筆者撮影、以下同)

著者プロフィール:郡司昇(ぐんじ・のぼる)

photo

20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。

現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」顧客体験(CX)部会リーダーなどを兼務する。

公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇

公式X:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質: 小売業5.0

 YOYOSO(ヨヨソウ)は2014年に中国・浙江省義烏市で創業された比較的新しいファストファッション雑貨ブランドです。世界40カ国以上、380都市以上に1000店舗を超える展開を達成しています。

 MINISOには及ばないものの、YOYOSOの成長スピードも相当なものです。両社とも中国発のブランドながら、海外展開を積極的に進めている点が特徴的です。

 YOYOSOは自社のコンセプトを「Aesthetic Fast Fashion」(美学ファストファッション)と位置づけ、8つのカテゴリで7000種類超の商品を常時扱いながら、毎月800点以上の新商品を投入するという高速サイクルのビジネスモデルを構築しています。これはアパレル業界のファストファッション戦略を雑貨市場に応用したものとも言えるでしょう。

MINISOとYOYOSOのブランド戦略の違い

 MINISOとYOYOSOはビジネスモデルの基本骨格は類似していますが、ブランド戦略には明確な違いがあります。

 MINISOは創業当初、日本デザインを前面に押し出したブランディングを行っていました。ユニクロに似たロゴや、無印良品風の店舗デザインを採用し、日本人デザイナーを起用するなど「日本発ブランド」という印象を生活者に与える戦略をとっていました。

 しかし近年、「誤ったブランド定位だった」と謝罪し、「誇りある中国ブランド」へと路線を変更しています。しかしながら、ロゴがユニクロに似たデザインであることは変わりません。

 一方、YOYOSOは創業当初から「美的生活デザイナーブランド」を標榜し、中国発のブランドとして自己表現をしています。ブランドカラーも緑やターコイズ系を用い、MINISOの赤白とは明確に差別化を図っています。YOYOSOの店舗デザインは「視覚と美学を重視した店舗体験」を前面に押し出し、より鮮やかでポップな印象を与えるよう工夫されています。

 筆者が見たときも商品にスポットライトをあてるLEDの配置など、多少のコストをかけても明るい印象を作る工夫をしていました。一般的には、アパレルブランドでは多用されるスポットライト照明ですが、コスト効率が落ちるため日用品の小売業では限定的に使われることが多いです。

LEDを使ったスポットライト照明で明るい印象を作るYOYOSO店内

 商品カテゴリは両社とも、コスメ、文房具、キッチン用品、インテリア雑貨、デジタル小物、玩具・ギフトなど多岐にわたりますが、YOYOSOはより頻繁な商品入れ替えと、トレンドに敏感な商品開発でMINISOとの差別化を図っています。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR