リテール大革命

ユニクロやDAISOにそっくり? ナゾの中国発雑貨「メイソウ」が、世界中で高速出店できるワケがっかりしないDX 小売業の新時代(1/2 ページ)

» 2025年01月30日 07時00分 公開
[郡司昇ITmedia]

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連載:がっかりしないDX 小売業の新時代

デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。

 本連載の読者の皆さんは、中国発の生活雑貨店MINISO(メイソウ)をご存じでしょうか。日本のユニクロに似た看板と、無印良品とDAISOを組み合わせたような店舗や商品デザイン――。

 そんなMINISOは現在、世界で出店を加速させています。筆者が2024年10月に視察で訪れたインドでも、外国企業の進出に関する厳しい規制があるにもかかわらず、MINISOを3店舗見かけました。

 かつて「日本ブランドとは?」を考えさせられた企業ですが、創業から10年が経ち、その販売戦略は大きく変化しているようです。

 この日本ブランドにそっくりな“謎”の生活雑貨大手が、世界中に高速出店できるのはなぜでしょうか? 躍進の背景を考察してみたいと思います。

世界で出店を加速させている中国発の生活雑貨店MINISO(2019年7月中国・上海にて筆者撮影)

著者プロフィール:郡司昇(ぐんじ・のぼる)

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20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。

現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」顧客体験(CX)部会リーダーなどを兼務する。

公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇

公式X:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質: 小売業5.0

MINISO(メイソウ)とは?

 MINISOは2013年に中国で設立された生活雑貨チェーンであり「高品質・低価格・シンプルデザイン」を掲げて、世界各国へ店舗を展開しています。2024年6月末時点で中国国内に4115店舗、海外に2753店舗の合計6868店舗を展開しています。

 見た目は日本ブランドのように見えますが、本社機能は中国にあり、商品の企画・製造も主に中国国内のサプライチェーンで行われています。

 初期には、日本のデザイナーである三宅順也氏がMINISOのデザイン顧問を務めていました。かつては看板にカタカナで「メイソウ」と書くなど、日本発であることを前面に押し出したマーケティングを行っていましたが、実態と事実が乖離(かいり)しているということで、これらの掲示はすでに取り除かれています。

 中国においては、ショッピングモールや都市中心部に多くのMINISO店舗が存在し、若年層を中心に人気を博しています。ミレニアル世代やZ世代を意識した店舗デザインやキャラクターコラボグッズ、季節ごとに入れ替わる低価格アイテムなどがリピーターを呼び、実店舗中心ながらECとの連携も進んでいます。

DAISOとMINISOの違いは?

 MINISOは海外への進出に積極的です。100を超える国と地域に進出し、手頃な価格でデザイン性が高い生活雑貨市場において躍進している企業です。

 初期コンセプトが「日本デザイン」であったため、日本でも一時出店していましたが、すでに店舗も日本法人もなくなっています。

 米国では、大都市圏のショッピングモールなどに店舗を構え、店舗数を増やしてきました。米国では9割近くの店舗が黒字ということで、1万店舗を目標に掲げ、出店を加速しています。筆者が米国を視察する際に、ショッピングセンターに行くとMINISOを目撃する頻度は年々増しています。

 米国のショッピングモールではMINISOとDAISO(日本の100円ショップ大手)がどちらも出店している光景を目にすることがあります。どちらも低価格雑貨を扱うチェーンであり、一見すると競合関係にありますが、その特徴は異なっています。

 DAISOは日本国内と同様に1.75ドル(地域によっては1.99ドル)など複数種類の均一価格で値付けされているのに対し、MINISOは商品ごとに価格設定が異なっている傾向があります。DAISOは価格の分かりやすさが強みとなり、MINISOは幅広い価格帯を扱うことで商品開発における価格の制約を取り払っています。

米国のショッピングモールで見たDAISO店舗(2022年10月米Seattle Westfield Southcenterにて筆者撮影)

 また、DAISOは日本の調理器具や掃除グッズ、文房具など実用性の高いアイテムを中心に展開し、日本らしさを前面に打ち出しています。日本語のパッケージがそのまま陳列されているケースも多く、和食や日本文化に興味を持つ顧客から支持されています。

DAISOは日本国内と同様に1.75ドル(地域によっては1.99ドル)など複数種類の均一価格で値付けされている(2022年10月米Seattle Westfield Southcenterにて筆者撮影)

 一方、MINISOはデザイン性やキャラクターコラボ商品が豊富で、若者や観光客が「ギフトにも使えそうなアイテム」を探しに立ち寄る傾向があります。そのため、MINISOはインドの空港内ショップにも出店していました。

 店舗デザインは、DAISOが比較的シンプルな欲しい商品カテゴリーを探しやすい計画購買に便利な店舗であるのに対し、MINISOは明るく華やかな演出をしています。SNSでの話題づくりを重視するMINISOに対して、DAISOはコストパフォーマンスと利便性を前面に出すスタイルです。このように、似ているようでいて両者の強みや訴求ポイントは異なっており、米国では共存・競合の関係を続けながら市場を拡大しています。

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