ANYCOLORとカバーの決算から伺える通り、いずれもVTuberビジネスを源流としながらも、現在ではキャラクターを軸とした「IPビジネス」へ転換を図ることで収益構造を強化してきた。
これは、両社における「投げ銭」や「YouTubeからの広告収入」の売上高比率の低下と、「グッズ」などの物販による売上高比率の高まりからも指摘できる。
かつて、VTuberビジネスは「YouTubeの顔色を伺うビジネス」といわれることもあった。これは、プラットフォームの手数料やチャンネルの停止といった収益に大きな影響を与え得る変更、つまり生殺与奪権をYouTubeに握られているという意味である。
また、VTuberはアニメキャラのように会社の意のままにコントロールできる存在ではなく、演者個人の人気が業績を左右しがちで、「タレントが卒業すればファンが離れる」という投資リスクが懸念されていた。
しかし、近年のVTuberグループは運営企業のサポートによって“箱推し”文化を育むことで、影響力の強いメンバーが卒業しても、ファンベースが崩壊しづらくなってきている。また、卒業したキャラクターも制作物に依然として残っていたり、グッズも継続して販売されていることが確認できる。
昔とは異なり、グッズや制作物について、魂(いわゆる中の人)の状況とは切り離して展開が進んでいる。ここもVTuber軸からIP軸への転換を裏付ける一つの証跡であるといえよう。
VTuberの卒業ラッシュはかつてのUUUMをほうふつさせる動きがあり、一部では「UUUM化」の懸念も囁(ささや)かれた。しかし、現実の人間であるYouTuberと違い、IPとして展開できるVTuberであるからこそ、現状ではUUUM化リスクが相対的に低下してきたといえる。
足元のVTuberビジネスをみると、「ワンピース」や「ガンダム」といった他の大型コンテンツとのコラボレーションも進む。VTuberグループそのものがエンターテインメント全般の新たなIP領域として認識されるのもそう遠くないのかもしれない。
VTuber市場の拡大が日本発のIPビジネスを世界に広げる呼び水となるのか。にじさんじとホロライブの動向は、今後もエンタメ業界と投資家の注目を集め続けるだろう。
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