日本ではこうした問題に対処すべく、ゆっくりだが規制強化される予定だ。日本政府は外為法の規制を強化し、外国政府に情報を提供する企業や個人などによる国内上場企業への投資を厳しくする。
中国の「国家情報法」などによって政府への情報提供を義務付けられている企業と個人による投資が主な規制対象だとみられているが、どこまで効果があるのかは分からない。APBのケースのように、表向きは日本企業が株式を取得していても、その背後に中国企業の存在がある場合も多い。規制の網をくぐってあの手この手で接触してくる。
特に政府の補助金を受けている技術系企業には、政府が動向を適切に監視できるシステムが必要だろう。専門家らによると、現在は政府も役所も人手不足で、怪しい投資に目が行き届いていないと指摘されている。そこにリソースをかける必要がありそうだ。
今から手を打たないと、数年後には日本の技術が中国にどんどん流出してしまう可能性がある。日本の政治家は、商品券問題や予算審議などで政局の駆け引きをしている場合ではない。国民の財産を守るために仕事をしてほしいものだ。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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