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HR産業に「ゲームチェンジ」起こす 企業の人材流出を防ぐ「社内版ビズリーチ」(2/2 ページ)

» 2025年03月28日 08時30分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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企業が働き手に選ばれる時代に

 ビズリーチが転職市場向けのサービスである一方で、社内版ビスリーチは働いている人の全員が対象になり、より大きな市場に向けたサービスといえる。南氏は人材流出を防ぐ鍵は「社員に素晴らしいと思われる会社を作ること」だと表現する。

 「社内版ビズリーチは市場が大きく、ゲームチェンジには時間も掛かると思います。日本の働き方に対して10年後にどのようにインパクトを与えることができるのか。これが、私たちが見ている時間軸です。その頃には流動性もさらに上がっているでしょう。その結果、企業が働く個人を選んでいた時代から、ある意味で企業が働き手に選ばれる時代に変わっていきます。では、選ばれるためにどうすればいいのかというと、素晴らしい企業になることです。社内の労働市場に向き合えば、個人に適した仕事ができることで生産性が上がり、日本経済の生産性も上がっていくはずです」

 日本企業では初任給を大幅に引き上げる動きが出ている。この動きも、企業が個人を選ぶ時代から個人に選ばれる時代に変わりつつある流れの一環だと南氏は感じている。

 「公平であることが一番不公平で、これまでは市場原理が働いていませんでした。しかし、世の中が変わり、専門性が上がり、規制も変わり、人が動くようになることで市場性が生まれます。野球に関わってきた経験からいえば、日本のプロ野球にフリーエージェントの制度ができて市場性が生まれたことで、大谷翔平選手のように米大リーグで活躍して高額な契約ができる選手が出てきました。日本のアマチュアから直接大リーグを目指す選手もいます。日本のプロ野球も変わっていかなければ空洞化する可能性があるものの、逆に変わることができて、大リーグと競争することができれば、さらに伸びるはずです。日本企業はこれまで非効率に働き手と向き合ってきたわけですから、ここで働き方を変えられれば、大きな伸びしろがあると思っています」

 ビズリーチと社内版ビズリーチは今後も進化していく。両方を同時に使うことで近い将来に実現することを、小出氏が明かした。

 「社内で3人の配置を計画しているポジションに、現状では2人しかいない場合、1人空席のフラグが立ちます。この1人を社内版ビズリーチで社内から探そうとすると、『この人がマッチします』とレコメンドが出ます。ただ、その人が所属する部署の事情によって、異動が難しいケースもあります。その際にはビズリーチを使ってシームレスに社外に人を求めることができます。つまり、求人票を作る作業が極めてゼロに近くなります」

 南氏はVisionalやビズリーチが見据える未来についても語った。

 「ビズリーチ、社内版ビズリーチ、社内労働市場と社外労働市場のつなぎ込みが、3段階のフェーズです。フェーズ4はあまりこれまで人前で話してこなかったことですが、おそらく個人のスコアリングが始まります。自分の経験、スキル、知識がスコア化されて、このステージに上がるためにはどういうことを学び、経験する必要があるのかが定義されていく。これは本当のリスキリングですね。フェーズ5は、20年後か30年後かもしれませんが、教育革命が起こることを目指したいです。どのような人が活躍しているのかが、高校や大学での活動内容や、どの授業を受けてどういう成績を取ったのかといった教育のスコアリングによって分かるようになります。そうなると、目標設定がしやすくなり、何をしなければならないのかが一目瞭然です。このスコアリングが教育業界に逆流していくと思っています」

 南氏は「日本にはまだまだ伸びしろがある」と言い切る。Visonalとビズリーチの取り組みは、日本の働き方を変えるだけでなく、日本の人材のポテンシャルを上げていくことを目指している。

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