両社は今後、それぞれの顧客基盤を生かし、提携先金融機関への法人向けサービス導入提案を進めていく。地方銀行や信用金庫にとって、この協業がもたらすメリットは多岐にわたる。
「地方金融機関は支店の統廃合が進み、リアルな顧客接点が減少する中で、デジタルチャネルの構築が急務となっている」と本川氏は指摘する。「しかし、独自のDX基盤を開発するには莫大なコストと時間がかかる。当社とJCBの共同ソリューションを導入することで、短期間・低コストで高品質なデジタルサービスを自行ブランドとして提供できることが最大のメリット」(本川氏)
実際に、銀行業務の効率化も期待できる。「融資審査においても、『Cashmap』で集約された顧客の資金状況データを活用することで、より精度の高い与信判断が可能になる。また、融資や各種手続きのオンライン化により、行員の業務負担も大幅に軽減できる」(中村氏)
法人顧客の囲い込みという点でも有効だ。「地域金融機関は大手銀行やネット銀行との競争が激化する中、単なる融資だけでなく、資金管理や経営支援までを含めた総合的なサービスが差別化ポイントになる」と本川氏。「顧客接点が増えることで、新たな融資機会やクロスセルの機会も生まれる」
JCBの99行のFCパートナーと、マネーフォワードエックスの「Mikatano」導入37行という両者のネットワークを活用し、「大きく3つのパターンを想定している」と中村氏は話す。法人向けポータルが未整備の金融機関にはOEM(Original Equipment Manufacturing、製品やサービスの製造を他社に委託する仕組み)提供、ミカタノとCashmapの融合、そしてDX未進行の銀行にはWeb側からの支援を進めるという。各金融機関の状況に応じたカスタマイズが可能な点も魅力だ。
マネーフォワードエックスの「Mikatano」が銀行の法人ポータル機能を、JCBの「Cashmap」がカード中心のDX機能を持つ。両者を融合させ、銀行業務もカードも含めた一つのプラットフォームを目指す。
「地域金融機関からは、われわれが先進機能をプロパーで試し、成功事例を共有してほしいという期待がある。JCBのプロパーがショーケースとなり、リスクを取って先行投資し、検証を重ねたものを各金融機関が導入できる形が理想だ」と中村氏は地域金融機関との関係性を説明する。
本川氏は連携の将来像を「さまざまなメーカーの家電をスマートスピーカーのような中央デバイスでつなぐイメージだ。われわれはそうした連携ハブの役割を担いたい」と説明する。
リアルとデジタルの融合、銀行とカード会社と新興フィンテック企業の協業というこの「異質な掛け合わせ」は、地方金融機関にとっての新たな競争力の源泉となるだろうか。
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