新時代セールスの教科書

SFAの限界──「量」の管理だけではもう足りない? 商談の「質」を管理する新時代のセールステックとは(1/3 ページ)

» 2025年04月04日 07時00分 公開

 SFAで営業組織の行動管理、進捗管理をすることは一般的になってきた。SFAを活用して商談進捗を確認し、売り上げと行動量を把握することは、もちろん重要だ。

 しかし、ただ「行動量」を管理するだけで、果たして売り上げ増につながるのだろうか。行動量管理だけでビジネスを拡大するのは不可能ではないかと、筆者は考える。

 顧客を動かすためには、営業活動の量的な側面だけではなく、質的な側面にも焦点を当てるべきだ。そこで、営業の提案品質を飛躍的に向上させる最先端のセールステックであるDSR「Digital Sales Room(デジタルセールスルーム)」について紹介する。

 DSRは営業提案をデジタル化し、顧客接点の量と質を担保し、提案への反応をデータで計測可能にする。オンライン、オフラインを行き来する新しい営業DXの姿が見えてくるはずだ。

SFAの限界 「営業のデータベース化」でありDXではない

 営業DXツールとしてSFAが最も有名だが、実はSFA自体は営業活動をDXしているわけではない。SFAの更新は人が社内の営業データベースに打ち込んでおり、SFA自体が顧客に提案をしてくれるわけではない。結局、営業は対面で商談をしている。

 そしてSFAの入力更新は営業メンバーにとってプラスαの事務作業となる。SFAの社内管理は更新が止まっている“残念な営業組織”も少なくない。これでは顧客のニーズや行動を深く理解するには不十分となる。

 SFAで管理できる情報は、以下など社内管理のためのデータベースが多い。

  • 商談の進捗状況(ステージ、フェーズ、ステータス)
  • 顧客の企業情報(従業員規模、業界など)
  • 契約情報(契約している製品や取引金額)

 これらのデータを整理したとしても、具体的に顧客に接点を持つのはあくまで営業担当個人であるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)ではなく営業のデータベース化という表現が適切だろう。これでは顧客中心のアプローチやデジタル時代のニーズには対応しにくい。

写真はイメージ、ゲッティイメージズより

 営業において顧客の反応をデータ化するためには、社内向けの営業データベース化だけではなく、社外の顧客に対して営業がデジタル接点を作る「デジタルセールス・エクスペリエンス」を考える必要がある。デジタルで顧客と直接接点を作るからこそ、顧客の反応データがデジタル化される。これがDXの肝である。

デジタルセールス・エクスペリエンス(提供:openpage、以下同)

令和の新しいセールステック「DSR」とは?

 では、営業がデジタルで顧客接点を作るとはどういうことなのか?

 営業において顧客とデジタル接点を作れるセールステックがDSRである。

 デジタルセールスルームとは、営業が手元で作れる、特定顧客専用のサイトマネジメントシステムである。営業担当は日頃、メールや電話、対面で顧客に情報提供している。そこで伝えている情報をデジタルに集約する。

DSRとは

 具体的には、顧客への提案内容、依頼内容、ヒアリングした内容や、役立ち情報などをDSRに格納し、顧客を招待する。営業は普段、Wordで議事録を書き、PowerPointで提案を作っているが、それらは全てDSR上で完結できるようになる。

 PowerPointで提案書を作り、人が手作業でメール送付する──というアクションを、DSRに格納して顧客に渡すという方法に変えるだけで、営業DXは実現できる。

営業のデジタルサービス化

 人が口頭で話した内容やメールで送った資料は、1週間も経てば顧客に忘れられてしまうもの。DSRに提案内容や議事録を格納しておき、顧客がいつでもアクセスできる状態を作っておけば、忘れられてしまうリスクも減る。

 このように営業活動の「デジタルサービス化」を進めれば、顧客は営業担当個人に頼らずともDSR上の情報で自社の購入検討の判断ができるようになる。属人化を防ぎ生産性の高い営業組織を作ることができるのだ。

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