B2Bの営業支援を手掛けるGrowth DXが3月27日に開催したイベント「BtoB Growth EXPO」内のセッション「AIが台頭する時代だからこそ改めて考えたいインサイドセールスの在り方」の内容を要約したものです。
電話であれWebサイトのチャットであれ、AIが初期対応することが増えている。場合によっては人間との会話やテキストでのやりとりをすることなく、最適な製品選びをAIで完結できることすらある。「顧客対応はAIに取って代わられ、ヒトが入り込む余地がなくなるのでは?」という言葉も聞かれるほどだ。
このようなAI活用の波は、インサイドセールス部門にも影響を与えている。
「ヒトとしての価値をアップデートしていくことが、AI時代のインサイドセールスでは重要になってくる」──B2Bの営業支援を手掛けるGrowth DXが3月27日に開催したイベント「BtoB Growth EXPO」で、インサイドセールスプラス 代表取締役 茂野明彦氏が語った。イベントでは茂野氏と、電話解析AIなどを提供するRevComm(東京都渋谷区)代表取締役 會田武史氏がインサイドセールスにおけるAI活用の未来について議論した。モデレーターはセールステックを提供するOPTEMO(東京都千代田区)代表取締役 小池桃太郎氏。
インサイドセールスではマーケティングが獲得したリードにアプローチするインバウンド型の「SDR」(Sales Development Representative)と、アウトバウンド型(企業が接点のない顧客にアプローチする営業手法)の「BDR」(Business Development Representative)という2つの手法が一般的になっている。
「SDRはすでに米国でほぼ自動化されている」と會田氏は言う。「Yes/Noスクリプトで対応可能なので、AIがヒトに取って代わりつつある」と米国でのAI事情を解説した。
一方BDRでは、米国でもヒトからAIへのリプレースが進んでいない。「Yes/Noスクリプトがやりとり全体の70%を割り込むと、AIでは対応できず、ヒトが必要になる」と會田氏。「ディープリサーチや仮説立てという前工程ではAIを活用できるので、オペレーションコストが下がってきている。これは日本でも同様の流れだ」と続けた。
茂野氏は、飲食店でのモバイルオーダーやスマホ注文の広がりに触れつつ、「世の中のトレンドは、B2Cでの成功をB2Bへ流用するものなので、B2B領域でも、誰にも会わずにモノを購入する時代が来ると考えられる」とコメントした。
「1年後になるのか、それより先なのか分からないが、それぐらい近い将来に、B2B領域でもヒトを介さずモノを買う時代がやって来るだろう。もしかしたら、購買する側にとって、そのほうが良い体験となるのかもしれない」(茂野氏)
今後、全ての営業活動にヒトは介在しなくても良くなるのではないだろうか。
會田氏は「米国では、“Autonomous Selling”、つまり販売活動の自動化は実現しており、完全自動化も3年ほどで実現すると予測できる。とはいえ、単価の低いものは合理的に購入するが、高いものであればヒューマンタッチの部分が重要になってくる」と語る。
茂野氏はその裏付けとして「AIが自動的にターゲティングをし、メールを送信する。それはすでに実現しているが、受け取る側からしてみれば、“死ぬほど”営業メールが来るという状態になる。それでは心が動かない。購買につながらないのだ」と解説した。
さらに、「AIは飲み会に参加できないし、趣味を共有できない。ゴルフに一緒に参加して親睦を深めることもできない。AIに『あなたは野球が好きなんですね』と言われたとしても、全く仲間意識を感じない。そういうエモーショナルな部分では、ヒトの代わりになりえない」と付け加えた。
「そのままでも優秀な営業がAIを使いこなすことで、ものすごい成績を上げられるようになる。AIを使いこなせないヒトにはそれができない。AIの台頭は、このような二分化をもたらすだろう」(茂野氏)
モデレーターの小池氏が、「AIを使えるかどうかでヒトの価値が変わってくるということか?」と質問すると、茂野氏は、知人が話した「今のAIは望むような回答を導き出せない」という考えを例に以下のように語った。
「私からすれば、AIではなく問いが悪いだけ。どのように問えば良いのか、AIを使いこなすための勉強が必要になってくる。今までより多くインプットしないと、どんどん差が開いてしまう」
「インサイドセールスでヒトに求められるのは、ツールを使いこなすことというより、顧客から信頼されるスペシャリストになることや、AIのおかげで空きの出た時間にアクティビティーをいかに行うか、どれだけのインプットをするかということ。そこにヒトが介在することの付加価値が生まれる」
「AIがかなり幅を利かせてくるとしても、営業活動にヒトは介在し続けるし全てが自動化されることはない。ヒトとしての価値を上げるために、どのように作業時間を圧縮できるか、雑務をAIにやらせるなど、使いこなしてインプットに時間を費やせるようになって初めてヒトが介在する価値を見いだすことができる」(茂野氏)
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