「ホワイトすぎるから辞めます」って本当? 若者の退職理由に潜む、もうひとつの意味スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2025年05月07日 12時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

「退職理由」の真の目的

 そもそも、「会社を辞める人」からすれば、その会社に「本心」を全てさらけ出す義理などない。では、「退職理由」は何を目的としているかというと、スムーズに後腐れなく「縁」を切ることだ。

 それは今の若手社員も同じだ。上司から「なんで辞めるんだ? 理由を言ってくれ」とつめ寄られて、「あんたみたいなさえない中間管理職になりたくないからだよ」とか「この会社にいても10年後の自分が想像できねえんだよ」なんて本音は口が裂けても言えない。そうなると「成長したい」「他にやりたいことがある」なんて感じの、どこかで聞いた「模範解答」をひねり出すしかないのだ。

 実際、エン・ジャパンが転職サービス「エン転職」の利用者3780人に聞いた2024年の調査によると、退職した人の半数が退職時に本当の理由を「伝えなかった」と回答している。

退職の報告をする際に「本当の理由」を伝えたかどうか(出典:エン・ジャパン)
「本当の退職理由」を伝えなかった理由(出典:エン・ジャパン)

 これは冷静に考えれば当然だ。読者の皆さんも就職活動では「会社説明会を聞いて営業の仕事に興味があります」「創業者の理念を見て共感しました」など、マニュアルに書いてある模範解答を言っていたはずだ。会社に入るときも、出ていくときも「本音」を明かす人のほうが珍しいのだ。

企業に伝える退職理由は本心ではない(出典:ゲッティイメージズ)

 そういう「若手社員の退職の現実」を踏まえれば、若手の「ホワイトすぎるので辞めます」といった退職理由も、話半分に聞いておくくらいがちょうどいい。

 令和の時代、退職する会社と一刻も早く縁を切りたい若手からすれば、この「退職理由」は引き止められるリスクゼロの最強カードだからだ。

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