「ホワイトすぎるから辞めます」って本当? 若者の退職理由に潜む、もうひとつの意味スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2025年05月07日 12時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

バイアスを考慮して慎重な取り扱いを

 令和の時代、若手社員が「ホワイトすぎるので辞めます」と言い出したら、上司はもちろん、人事部や経営者までもがこの言葉にひれ伏すしかない。まるで水戸黄門の「印籠」のようなものなのだ。

 さて、そこで気になるのは、「ホワイトすぎるので辞めます」という言葉が、令和の若者の本心を反映しているかのような誤解が広まっていることだ。個人的には、日本社会が「組織を辞める(辞めた)人」の話を真に受け過ぎていることが大きいと思う。

 あまり語られないが、組織から離れる人というのは基本的にその組織に良い感情を抱いていない。転職先や新天地のほうが魅力的だから離れるのであって、この組織がこれからどうなろうと知ったこっちゃない。そして、その中には、組織文化に失望したり、組織内部での出世争いに巻き込まれたりして、組織に対してネガティブな感情を抱いている人も少なくない。

退職希望者の対応は慎重に(出典:ゲッティイメージズ)

 したがって本来、「組織を辞める(辞めた)人」の話は、そうしたバイアスを考慮し、細心の注意を払って取り扱う必要がある。

 例えば、トヨタ自動車を取材しているジャーナリストが2人いるとしよう。1人はトヨタの経営陣や現役のマネジメントなど社員に取材しており、もう1人はトヨタを辞めた元幹部や元社員に取材をしている。ではこの2人が発信する「トヨタ報道」はどうなるかというと、「同じ企業の話とは思えないほど別物」になる。

 元幹部や元社員はさまざまな理由で会社に見切りをつけた人たちなので、語ることは会社にとってネガティブな情報が多い。組織文化や経営体制などへの不満・憎悪も強いので、そこを情報源にするジャーナリストの報道もネガティブな方向に引っ張られがちなのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.