「ホワイトすぎるから辞めます」って本当? 若者の退職理由に潜む、もうひとつの意味スピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2025年05月07日 12時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

若手社員の3割は辞める

 当時の記事でも指摘した通り、厚生労働省の「学歴別就職後3年以内離職率の推移」を見ると、ホワイトかブラックかという話ではなく、いつの時代も若手社員の3割ほどが辞めていることが分かる。

新規学卒者就職率と就職後3年以内離職率(出典:厚生労働省)

 例えば、過重労働が大きな社会問題となり、労働安全衛生法が改正された2006年(平成18年)の大卒3年以内離職率は34.2%だ。一方、2021年(令和3年)は34.9%である。

 ブラック企業だらけでも、ホワイト企業が徐々に増えても、新卒の3割くらいは「ドロップアウト」するものなのだ。そして、そのときどきの「時代のムードに合った言い訳」が注目を集めて、「最近の若者は」というニュースになっているだけの話である。

 こういうニュースを目にして、「そっか、ホワイトすぎるのが嫌だと言えばすんなりと辞めさせてもらえるな」ということで、この退職理由をパクっている若者もかなりいるはずだ。

 「モームリ」などの退職代行サービスを利用する若者が増えていることからも分かるように、「会社を辞めたい若者」というのは、会社や上司と「うちのどこが不満なの?」「考え直せないか」などのやりとりをしたくない。

 つまり、若者の「退職理由」というのは、本心かどうかなどよりも、「説得されない」「引き止められない」ことに重きを置いているものなのだ。

 「親の介護に時間を取られて残業がまったくできないので」とか「田舎に帰って家業を継ぎます」とか、上司や人事部が引き止めにくい退職理由を告げて去った若手が、しばらくしたら競合に転職したとか、明らかに前職よりも給料の高そうな会社に勤めているという話は、サラリーマンをやっていれば、一度や二度は耳にしたことがあるはずだ。

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