「イワタニといえばカセットコンロ」というイメージが強いかもしれないが、実は1990年にサイフォン式のコーヒーメーカーを発売している。
お湯が沸騰すると、ポコポコと音がするフラスコ部分は、丸みを帯びたガラス容器を使用した「砂時計」のような形をしている。下にはアルコールランプがセットされ、加熱によって下の容器の水が上昇し、上部でコーヒー粉と混ざり、抽出される仕組みである。
パッと見たところ「理科室にあった実験用の装置を、家庭用にデザインした」感じである。見た目は悪くないので「好評だったのでは?」と思いきや、当時の反響はいまひとつ。しばらくして、終売に追い込まれた。
ブラックコーヒーのような“ほろ苦い”経験をしてきた中で、「コーヒー焙煎機をつくらせてください」と提案した際、社内ではどんな反応があったのか。
阿部さんが所属するチームは、同社がこれまで扱ってこなかった新しい商品を開発してきた。本格的な鉄板焼プレートや炎を楽しむ暖炉を発売し、いずれも想定を上回る売り上げを記録している。新商品の開発にあたって「自分たちが欲しいモノをつくろう」というモットーを掲げているので、「コーヒー焙煎機」の話がでてきたときも、チームメンバーから反対の声はなかった。
問題は、他部署である。「本当に売れるの?」「焙煎機なんて使ったことがない」といった声があった。それもそのはずである。コーヒーを飲む人はたくさんいる。しかし、自宅でサイフォンやドリップなどを使って、楽しむ人はぐっと少なくなる。ましてや、焙煎する人となると、さらに限られる。
大きな池に魚が数匹しかないところで、糸を垂らすようなものである。購入者がいるかどうかよく分からないモノなのに、それを開発すると言われても、不安を感じて当然である。
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