では、そうした「現状維持を望む50代」は、どこで働いているのかというと「中小企業」である。
ご存じの方も多いだろうが、日本企業全体の中でパナソニックのような大企業はわずか0.3%に過ぎない。99.7%は中小企業で、そのうち約6割は、従業員が数人規模の「小規模事業者」だ。しかも、日本人の7割がこの中小企業で働いている。つまり「現状維持を望む50代」が本当にあふれているのは、パナソニックなどの大企業ではなく、全国336万社の中小企業なのだ。
こういう現実を踏まえれば、中小企業の生産性が低くなるのは当然だ。「現状維持を望む50代」が経営者や従業員として多く関わっているので、新たな付加価値を生み出そうとせず「現状維持」――つまり「倒産しない」ことを目的に運営している中小企業が日本中にあふれているのだ。
「そんなのはお前の妄想に過ぎない」と失笑する人も多いだろうが、データを見ればそう考えざるを得ない。中小企業庁が発表している「中小企業白書(2019年版)」の「存続企業の規模間移動の状況(2012〜2016年)」が分かりやすい。
これは2016年時点で、廃業せずに存続している事業者295万社が、4年前の2012年からどれほど、従業員を増やすなどして企業規模を拡大させてきたのかを調べたものである。それによると、規模拡大に成功したのはなんと7.3万社のみで、95%に当たる281.3万社が「規模変化なし」だったのだ。
つまり、『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)や『がっちりマンデー!!』(TBS系)のような情報番組で「急成長している中小企業」などと紹介されるのは超マイノリティーであって、95%は「成長も倒産せず、現状維持を目的とした企業」なのだ。
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