これはパナソニックという名門企業の50代ならばなおさらだ。有価証券報告書にある平均年間給与は930万4992円。個人差はあるものの、50代ともなればさらに高収入の人もいる。
先ほど見たように50代の転職はまだまだ厳しい。新しいチャレンジをして今以上の待遇を得るのはかなりの狭き門だ。となれば、「定年退職までどうにか会社にしがみつこう」と考える50代が増えるのは自明の理だ。
「それの何が悪い! 50代にもなれば第二の人生を考えて守りに入るのも当然だろ」というお叱りが飛んできそうだが、それ自体は何も悪くない。先の見えないこの日本において、個人が行う当然の「自己防衛」だ。
ただ、「会社」という組織体から見ると、これはあまりよろしくない。労働生産性を向上するというのは、これまで2日でやっていた仕事を1日で終わらせるとか、そういう「効率化」とはまったく別で、付加価値を高めていくことだ。つまり、これまで100万円で売っていた商品に新たな価値を乗っけて、200万円に値上げしても顧客が満足するような「新たなチャレンジ」をすることだ。
しかし、「現状維持を望む50代」はそういう危ない橋を渡りたがらない。チャレンジして失敗すれば、これまで積み上げてきた評価が下がり、待遇が悪化して退職後の人生設計に支障をきたす恐れがあるからだ。
では、今の待遇を退職まで守るにはどうするのがベストかというと、「余計なことはしない」。会社から与えられたミッションを粛々とこなすのだ。
これはサラリーマンとしては「合格」かもしれないが、新しい価値が生み出されていないため、生産性は当然上がらない。だから、パナソニックは30年間成長できなかった。
このような低成長を招く「負のスパイラル」は、実は日本も全く同じである。
先ほど見たように、日本の労働者も50代が突出して多い。この年代はあまり転職をしないで、「今の職場で定年退職までいたい」という志向が強いのも、これまで述べてきた通りだ。
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