どうして日本人は“箱型”が好きなのか ミニバンが売れ続ける日本市場の特異性『自動車ビジネス』(2/3 ページ)

» 2025年05月17日 09時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]

 1970年代になると、後ろにトランクのないハッチバック車が人気となります。名前を挙げればトヨタ「スターレット」やホンダの「シビック」、三菱の「ミラージュ」です。マツダのハッチバック「ファミリア」は1980年代に大ヒット車となっています。

 1980年代になると、さらに幅広い車型が人気となります。かっこいいクーペでデートのために使われる「スペシャリティ」に注目が集まり、ホンダ「プレリュード」や、日産「シルビア」、トヨタ「セリカ」が若者たちに人気となりました。

 また、80年代にはアウトドアにクルマで遊びにいくというRVブームが生まれます。クロスカントリー車(いまで言うSUV)や、ステーションワゴンの人気が急上昇します。人気となったのが三菱「パジェロ」やトヨタ「ハイラックス」、日産「テラノ」でした。

 この流れの延長で、1990年代になるとトヨタ「RAV4」や「ハリアー」、ホンダ「CR-V」がデビューします。クロカンではなく、街乗りメインの正真正銘のSUVの誕生です。

1990年に登場した初代「エスティマ」(出典:トヨタ自動車)
2代目「エスティマ」(出典:トヨタ自動車)

 同じ1990年代には、トヨタの「エスティマ」、日産「セレナ」、ホンダの「ステップワゴン」がデビューします。商用車ベースではない、乗用を主眼として生まれた、いまのミニバンの開拓者となります。

 ただし、これらSUVやミニバンの先駆者は、大ヒットしたわけではありません。あくまでも、昭和から平成初期の不動のベストセラーはトヨタの「カローラ」です。「カローラ」は、1969年から2001年まで、33年間連続の国内販売台数1位の座を守り続けていた絶対王者だったのです。

 ただし、「カローラ」の1位には、特別な理由があります。それは派生モデルがたくさんあったということ。「カローラ」は、セダン、クーペ、ハッチバック、商用バン、ステーションワゴンと5つもの車型を持っていました。言い方を変えると当時は、「カローラ」にある5つの車型が売れ筋だったのです。

 しかし、2002年に「カローラ」が1位の座を追われた後、日本の市場は大きく変化します。

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