氷河期世代支援 “今さら”と思っても絶対にやるべき、これだけの理由(2/3 ページ)

» 2025年06月04日 06時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

近い未来に懸念される、介護離職問題

 国は2019年に「就職氷河期世代支援プログラム」を開始した。正規雇用者を30万人増やすことを目標に、氷河期世代を正社員として採用する企業に助成金を出したり、国家公務員や自治体職員の募集で氷河期世代の枠を設けたりした。しかしコロナ禍と重なったこともあり、一定の効果にとどまった。

3年間の予定だった「就職氷河期世代支援プログラム」は期間を延長して今も実施中だ(「就職氷河期世代活躍支援」特設サイトより)

 最近は、「このままでは老後の生活に困窮する人が大幅に増える」という「氷河期世代の将来」を問題視し、年金制度改革や支援の充実を訴える声が目立つようになった。

 無職や低収入で親の援助を受けながら暮らす人は、親が亡くなれば収入が途絶える可能性がある。なんとか経済的に自立している人も、親の介護が始まれば出費がかさむし、時間も取られる。仕事と介護の両立支援策は非正規社員にまでは届かず、介護離職に至る可能性が高い。そして、低収入ゆえに本人の老後の年金額も低い見込み……など、今後10年、20年の間に顕在化するであろう問題が山積みだからだ。

100万人の氷河期世代が抱える事情と必要な支援

 氷河期世代に当たる人はおよそ2000万人いるが、その全てが困っているわけではない。国が支援の対象としているのは、「A.不安定な就労状態」「B.働くことを希望しているが無業」「C.ひきこもり」の約100万人だ。

 その中でも「A.不安定な就労状態」は約50万人いるとされる。国はこの人たちの正社員化を目標に、企業に氷河期世代を積極的に雇うよう働きかけている。

 そのメリットをアピールするために公開されている成功事例の中では、非正規であっても長年の経験がありスキルが高い、苦労してきたからこそ真面目に働く、若手と年配者のコミュニケーションの橋渡し役になっているなど、雇用した氷河期世代の能力を評価する企業が多い(参考:厚生労働省「就職氷河期世代の人材活用〜企業を元気にする12の好事例集〜」)。

 そのような人たちが正当に評価され、安定した職を得ることは非常に重要だ。しかし、同じ「A.不安定な就労状態」にある人たちの中にもさまざまな事情がある。異なる職種を転々としていたり、単純作業しか経験できていなかったり、スキルが積み上がっていない人も多い。苦労してきたがゆえに心身の不調があり継続的に働くのが困難な状態にある人もいるだろう。

 日本総合研究所は、「A.不安定な就労状態」にある人たちをさらに4つのカテゴリーに分けて分析している。カテゴリー分けの軸は、正社員として働くことへの意欲や自信、これまでの就労状態だ(下図)。

 企業に正社員として雇用され、評価が得られやすいのは、4つのカテゴリーの中でも(1)の「特定の仕事に長年勤務し、専門性を有する」タイプや、(3)の「派遣やアルバイト、パートを繰り返しているが、働くことにおいては意欲的」というタイプだろう。

 働くことへの自信や意欲の低い(2)や(4)のタイプや、「B.働くことを希望しているが無業」「C.ひきこもり」の人には、より手厚いケアが必要だ。

 国は、今は働いていない人向けの就職の準備や、引きこもりの方の社会参加などを目指した支援も行っている。これらが実を結び、安定的な職業に就いて経済的に自立できるというケースもあるだろう。

 しかし、それには時間がかかる。時間をかけているうちに高齢者の年齢に達する人も多いと見られる。だから、仕事に就くことをゴールとする支援だけでなく、社会保障制度の改革や、住まいの確保を支援する制度、親の介護の負担を軽減する制度など福祉の充実が急務だ。

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