社員の実力を最大限発揮させるために必要な、経営者の考え方(2/2 ページ)

» 2025年06月06日 06時15分 公開
[小田島春樹ITmedia]
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メンバーに寄り添う柔軟な休暇制度

 加えてメンバーの長期休暇取得率は100%です。

 年間の来客予測により、繁忙期や閑散期を見通せるので、来客数が少なくなる時期をメンバーと共有し、その中から希望の期間に長期休暇を取得してもらいます。飲食や小売りなどのサービス業は、常に現場を回し続けなければいけないため、メンバーがなかなか長期の休みを取れないケースが多いものです。でも、データを活用すれば、その課題もクリアできます。

写真はイメージ、ゲッティイメージズより

 さらに会社独自の「特別有給休暇」も設けています。これは担当業務によって取得できる休暇日数に差をつけないための施策です。

 現在は食堂以外の事業も展開しています。飲食や物販などの店舗型ビジネスは、来客数が増える土日祝日に出勤してもらわなくてはいけません。一方、システム関連のビジネスに携わるメンバーは、一般の会社員と同様、土日祝日は休めます。その結果、店舗で働くメンバーはシステム会社で働くメンバーより祝日分だけ休みが少なくなり、両者の休日数は年間でおよそ11日の差が生じます。この差を解消するための制度が特別有給休暇で、店舗で働くメンバーは年間11日の有給休暇を取得できます。

 さらに、本人が希望すれば、会社が買い取ることも可能です。「休みが増えるより、お金をもらいたい」といった場合も、柔軟に対応できます。

 こうした取り組みにより、誰もが長期休暇を取りやすくなりました。食堂で働くメンバーが2週間の連続休暇を取って海外旅行を楽しんだり、副業として別の仕事にトライしたりなど、それぞれに休みを満喫しています。

メンバーが力を発揮できるかは、経営者次第

 私たちの会社は、女性が多いのも特徴です。常勤の従業員のうち85%が女性。役員は女性3人、男性は私を入れて2人です。

 メンバーの中には、子育て中の女性やシングルマザーもいます。お子さんが小さいうちは、働く時間に制限があったり、子どもの急な発熱で仕事を休まざるを得なかったりすることもあります。ですが、それはハンデになりません。最小限の人数で仕事を回せる仕組みがあるため、誰か一人が急に休むことになっても、他の人たちで十分カバーできます。

 また、時短で働いたり、週4日勤務にしたりと、働き方を変えることも可能です。これは子育て中かどうかにかかわらず、希望があれば会社が相談に応じます。なかには、週4日は食堂で働き、他の日は副業でスポーツインストラクターをしているメンバーもいます。

 昨今は、出産後も女性が働き続けるのは当たり前になりつつあります。しかしながら子育て中の女性は採用されにくかったり、採用されたとしても非正規雇用だったりと、不利な扱いをされる傾向が見られます。

 「子育て中だからパートでしか採用しない」といった区別をせず、むしろ実力があれば「正社員になりませんか」と積極的にすすめています。実際にパートとして入社したのち、正社員へ転換し、現在は執行役員を務めているシングルマザーの女性もいます。彼女にはそれだけの実力があったということです。

 結局、メンバーが本来持つ力を発揮できるかどうかは経営者の考え方次第です。「小さな子どもがいる女性が正社員として働くのは難しい」などと決めつけてしまったら、本当ならもっと活躍できる人材を埋もれさせることになります。

 組織の生産性を高めたいなら、まずは経営者自身が、働くことに対する概念や価値観を変えていく必要があります。

筆者プロフィール:小田島春樹(おだじまはるき)

 三重県伊勢市にある妻の実家の老舗店を受け継ぎ、「ゑびや」代表に就任。AIなどを用いたデータ分析を取り入れ、経営改革に取り組む。

 2018年、株式会社EBILAB(エビラボ)を立ち上げ、来客予測を主軸としたデータ分析システムのサービス開始。マイクロソフト「People who inspired us」にて事例が紹介されるなど、世界からも注目を浴びている。


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