ネスレ日本のコンタクトセンターは、顧客からの問い合わせをオンライン上で完結させるための取り組みを強化している。
FAQやメール、チャットなどの環境を整備し、2017年時点では問い合わせがほぼ100%電話経由だったのに対し、現在はノンボイス比率が9割を超え、電話での問い合わせは10%に届かないという。
電話での問い合わせがメインだった状況から、オンライン上で顧客が課題を自己解決できる環境をどのように整えていったのか。コンシューマーエンゲージメントサービス部 部長の宮崎康司さんと、ノンボイスユニットの田中敬士さんに話を聞いた。
ネスレ日本では「コンシューマーエンゲージメントサービス部」がコンタクトセンター運営、SNSやWebサイトなどのデジタル上の接点など、顧客との1対1のコミュニケーションに対応している。現在コンタクトセンターには社内で66人の社員が在籍。加えて、ピーク時には約80人、オフシーズンには約50人のアウトソース(委託)が勤務する。
FAQの閲覧を含めたトータルの顧客からのコンタクト数は235万件程度。そのうち電話での問い合わせは年間24万件程度だという。コーヒーメーカー関連が特に多く、「使用方法、手入れのやり方が分からない」「正常に動作していない」といった問い合わせが多く集まる。
2017年時点では、顧客からの問い合わせは電話経由がほとんどで、コンタクト数は120万件程度だった。インターネットでの情報収集が一般化し、顧客のメールやチャットでの問い合わせニーズが高まっていたこと、企業側も人手不足や人件費高騰に対応したいと考えていたことなどを受け、FAQを含むデジタルチャネルの環境整備を強化。電話やメールといった有人対応ではなく、顧客が課題を自己解決できる状態を目指した。
同社が特に力を入れているのがFAQだ。これまでは「キットカット」「ミロ」などのブランドごとにFAQページを用意していたが、2021年に統合。コンシューマーエンゲージメントサービス部での一括管理を開始した。
「メーカー側が伝えたいFAQと消費者が知りたい回答は、微妙に違います。コンタクトセンターで顧客と実際にやりとりしているコンシューマーエンゲージメントサービス部が管理することで、消費者目線で回答を用意できると考えました」(宮崎さん)
顧客が自力で課題解決できる環境を整備するには、FAQやその他コンテンツの回答精度を高めていく必要がある。同社ではPDCAサイクルを軸とした継続的なコンテンツ改善に取り組むことで、現在のノンボイス対応9割超を実現している。
具体的には、FAQの閲覧回数やクリック率などのデータから課題を特定→既存コンテンツの加筆修正や新規コンテンツを作成し、顧客により伝わりやすい文章に変更→閲覧数やアンケートで顧客の反応を確認し、施策の成果を確認する──という流れだ。
ここで重要となるのがアンケートである。同社の各FAQの末尾には、満足度を「○△×」で答えるアンケートを設置している。このシンプルな回答方法を取っている理由について、田中さんは「とにかく回答の量を増やしたい。シンプルに感想を伺いたいので、このような形にしています」と語る。
「過去に、コーヒーマシーンの使い方が分からないというFAQに対し、『×』を押されることが多いという状態がありました。コメントに『どうやって動かしたらよいか分からない』などの声をいただいたことを受け、解説に画像を入れたり、動画を活用したりして可視化し、評価が高まったことがあります」(田中さん)
アンケートの回答はPVに対して約2%ほどだが、月間で4000件程度も集まる。
「アンケートで評価が低いものの改善はもちろんですが、閲覧数が少ないものを消したり、短期間で急速にアクセスが増えているFAQの解説にアップデートを加えたり、さまざまな指標を確認しながら改善活動を進めています」(田中さん)
これらの取り組みを継続した結果、問い合わせ全体の解決率は2023年に55.1%だったところから、2024年には61.1%に改善した。
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