グローバル標準ではないという制約を抱えながらも、QUICPayは独自の生存戦略を描いている。「市場の主役」を目指すのではなく、国内ユーザーの利便性を支える「補完的役割」に徹することで、安定成長を維持するという戦略だ。
そのためには、モバイル決済への集中が最も重要だ。プラスチックカードからの撤退を逆手に取り、スマホでの利用体験向上に注力するという戦略は、すでに利用頻度と単価の両面で成果を上げている。
新たなパートナーシップの拡大も継続中だ。ドン・キホーテの電子マネー「majica」がQUICPay対応を開始するなど、クローズドだったプリペイドサービスがオープンになる際の移行先としての役割も担っている。
「衰退」ではなく「共存」という現実的な着地点を見つけたQUICPayは、タッチ決済が使えない場面や国内専用サービスとの連携が必要な際の受け皿として、モバイル決済市場の一角で存在感を維持し続けている。
日本独自の技術という宿命を受け入れながらも、着実な成長を続けていく道筋を描いているのである。
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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