共存共栄が実現しているにもかかわらず、なぜアプラスをはじめとするカード会社がプラスチックカードからのQUICPay撤退を表明しているのだろうか。
その理由は、QUICPayの利用者の多くがスマホなどのモバイル端末を使っており、プラスチックカードに搭載された機能を使う人がごくわずかだからだ。1枚のカードにクレジット機能、タッチ決済機能、QUICPay機能を搭載しても、実際の利用頻度は多くの場合どれかに偏る。カード発行会社にとって、利用頻度の低い機能を維持する理由がないのだ。
JCBにとって、これは縮小ではなく戦略的な移行だという。「確実に伸びるため、さまざまな手段でモバイル化を推し進めたい」(中村次長)という考えだ。実際、モバイル決済の利用者の方が頻繁にQUICPayを使い、利用額も大きい傾向にある。
カード発行会社とブランドホルダーであるJCBの間の温度差もある。カード会社にとってQUICPayは数ある機能の一つだが、JCBにとっては重要な収益源だ。プラスチックカードからの撤退は表面的には衰退に見えるが、実態としては「効率性を重視した戦略的選択」だったのである。
モバイルシフトと共存共栄を実現しながらも、QUICPayが日本のキャッシュレス決済市場で「主役」の座を獲得できない理由もある。それは、グローバル標準と日本独自規格という根本的な違いだ。
QUICPayはソニーが開発した非接触ICカード技術である「FeliCa(フェリカ)」をベースとした日本専用規格であるのに対し、タッチ決済はNFC Type A/B方式という世界共通技術を採用している。インバウンド需要が回復し、海外発行のカードでそのまま使えるタッチ決済の利便性が注目される中で、QUICPayは国内市場にとどまらざるを得ない。
戦略面でも違いは明白だ。QUICPayは具体的な市場シェア目標を示していない。中村次長の「お客さまが使いたい、使いやすい方を好きに選んでいただきたい」という姿勢は、現実的な判断といえる。
サービス面でも対照的だ。QUICPayは20年間で培ってきた安定性を重視しており、土居喬次長が「新機能はない」と語るように、ある意味完成された技術だ。
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