2025年3月期で、個人顧客数約2200万人、国内法人取引が上場企業の約8割という顧客基盤を持つみずほフィナンシャルグループ(記事公開現在)。
「ともに挑む。ともに実る。」を企業パーパスに掲げる同社は現在、新たな人事制度「かなで」を推進しながら、AI時代の経営について、議論を進めている最中だ。生成AIの普及によって同社のビジネスはどれだけ変化していくのか。みずほフィナンシャルグループ 執行役常務グループCDO 上ノ山信宏氏に話を聞いた。
この記事は、8月21日に開催された「PKSHA AI Summit 2025」で上ノ山氏が登壇した「AIと人が共進する金融の未来〜<みずほ>の戦略と挑戦」の内容を基に紹介する。
「経営の仕事は、3年後、5年後、10年後、100年後といった長い時間軸を行ったり来たりしながら企業価値を向上させていくことだ」と上ノ山氏は言う。
「現在何が起きているのかも大事だが、近い将来に世の中がどのように変わるのか、100年後もこの会社が存続するのか、循環思考的に考えていく必要がある」(上ノ山氏)
時間軸の近い事象はより具体的、現実的な内容を含められるが、時間軸の遠い話になればなるほど、考えなければならないことが抽象的かつ理念的な内容になる。そのため、企業理念を明確に定め、それに基づいて企業価値を向上させることを目指していくことが、経営に求められる重要な役割だ。
「ビジネス領域の拡張、オペレーションの変革、人的資本の引き上げ──。時代を経ても、イノベーションにより価値を出し続けられるようにすること。ビジネスモデルやオペレーションの在り方をどう最適化していくのか、総合的に運用しながら価値を創出し、企業価値向上を図っていくことが、経営の重要な仕事となる」
上ノ山氏は、生成AIという技術を獲得したことで、人間の、認知能力の限界を超えることができるようになったと話し、経営への影響を以下のように語る。
「現時点での経営は人間が行うプロセスを前提にしているが、AIを獲得したことでオペレーションモデルそのものを大きく変革できる」
オペレーションモデルを変革する際、無駄な仕事の排除、組織の最適化、人的資本価値の向上、マネジメント力強化など、やるべきことは山積みだ。「いわば経営の総力戦であり、あらゆるものを変えていく必要がある」と上ノ山氏は語る。
「無駄な仕事の排除」では、事務作業を中心にホワイトカラー職が生成AIによって“取って代わられる”といった意見も盛り上がりを見せている。これについて同社は「現在議論中である」とした。というのも、単なるアルゴリズムでは解決できないもの――直感、ひらめき、価値観、共感、身体知という領域では、AIが人に取って代わることができないと同社は考えているからだ。
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