生成AI活用を重要な経営課題と定め、議論を進めているみずほフィナンシャルグループ(以下、みずほグループ)。同社は現在4つの注力領域を定め、集中的に資源を投下している。
銀行業態を展開する同社だが、窓口業務や店舗スタッフの役割は、生成AIの利活用によってどのように変化すると見通しているのか。「AIに仕事を奪われるのでは?」という議論もある中、みずほグループの考えを、執行役常務グループCDO 上ノ山信宏氏に聞いた。
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現在みずほグループは以下4つのテーマを経営戦略の中期的な注力テーマと定め、ヒト・カネといった資源を集中的に投下。これらにアラインする5つの領域をAI活用の重点領域として選定し、徹底的なAI化を進めているという。
(1)顧客の利便性を上げていくこと
(2)資産所得の倍増に資するサービスを提供すること
(3)日本企業の競争力強化を支援すること
(4)世界で通用する金融サービスを提供していくこと
現在の進捗について上ノ山CDOは「まだAIで遊んでいる段階。でも、今はそれでいいと思っている」と語り、生成AIを活用する前段階として、サービスを知り、触り、試すことの重要性を強調した。
併せて同社が注力するのが、人材育成である。
これまで、社員全体のスキルを底上げするための取り組みをさまざま提供してきた。スキル検定やデータサイエンティストの育成・発掘を目的としたコンペを実施。「エージェント」「LLM」など個別のテーマを設けた勉強会を開催したときには、全社で1000人以上が参加希望を出すなど、社員の関心は高い。
本社業務に限らず、各店舗でも実際に生成AI活用事例が出てきた。例えば、社内向け生成AIツール「Wiz Chat」を活用し、店舗の「受付」と「カウンター」の間の情報連携を効率化するプロンプトを作成したり、顧客への提案準備をする際に想定QAの壁打ちに生成AIを活用したり。「年末年始のお客さまへのごあいさつのルートを、生成AIを活用して効率的に組んでいる店舗もあった」という。
上ノ山CDOは「こういったアーリーアダプター(早期導入者)を増やしていきたい」と話す。
「アーリーアダプターが出てきているのはすごく良いこと。これを同心円的に広げていくため、社内PRを強化し、従業員の『世の中がこんなに変わっているからこそ、自分もやってみようかな』という意識を醸成していきたいです」
社内向けのSNSを運用し、各社員が独自で作ったプロンプトを“自慢”できる環境を整えたり、同社が提供するAIツール「Wiz Chat」の使い方相談や最新のAIツールを体験できる場「DXカフェ」を、出張形式で各地で開催したり、さまざま取り組みを強化する。
最近では、みずほ銀行の頭取である加藤勝彦氏が自らAIエージェントを構築。その様子を動画で社員に配信した。
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