2025年2月、カスタマーエクスペリエンス&データプラットフォーム(Customer Experience & Data Platform:以下、CXDP)を提供する英Dotdigitalが、日本支社を立ち上げた。
生成AIが普及した今、一人一人の顧客に合わせた内容で、適切なタイミングで情報を届ける重要性が増している。そんな中、化粧品メーカーのアルビオンはDotdigitalを活用してメールマーケティングを強化しており、メールは「顧客へのラブレター」だと語る。同社がメールマーケティングを強化する狙いとは?
10月8日に開催したイベントに、Dotdigital CEO Milan Patel(ミラン・パテル)氏、JAPAC オペレーションディレクター Murdo Wallace(マード・ウォレス)氏、Dotdigital Japan カントリーマネージャー 上崎理会子氏が登壇し、日本における戦略を語った。
Dotdigitalは、ロンドン証券取引所に上場しているグローバル企業だ。シドニーやシンガポールなどに8拠点を構え、150カ国で5000社にCXDPを提供している。
CXDPについては「顧客に合わせ、ちょうど良いタイミングでメッセージを送信でき、より良い顧客体験を提供する」ツールだとしている。
Dotdigital Japan設立のため来日したマード ウォレス氏(写真左)とミラン パテル氏(写真右から2番目)。ウォレス氏とパテル氏に挟まれているのは上崎理会子氏で、最も右側にいるのはDotdigitalが展開するWinstonAIのキャラクター「Winstonくん」だ同社は注力している3本柱を次のように掲げる。
1つ目は地域的なマーケットの拡大、2つ目はパートナーシップの強化、3つ目は市場にマッチしたプロダクトの展開とその成長──の3つだ。
また、「Platform、Product、Partner」の「3つのP」を成長の柱とする。研究開発への投資をして利益を上げていくこと、さらなる人材への投資やコミュニティーを重視していくこと、パートナー企業との関係性を重視していくことなどを戦略として挙げた。
シンガポールを極東の拠点としていた同社は、なぜ日本支社を設立したのか。
パテル氏は、日本が世界第4位のEC市場を持っており、デジタル化やパーソナライズの需要が高いこと、またパートナーシップを通じた発展性も高いことを挙げた。
同社は2年前からテストマーケティングを行っており、国内市場に展望のあることが確認されているという。日本でのテストマーケティングを開始したのは約2年前。当時に比べ、現在はパートナー企業数は1900%増、数社しかなかった導入事業者数は800%増、売り上げは565%増の伸び率となっている。
ウォレス氏は、プロダクトのローカライズは単なる「翻訳」にとどまらないことを強調。例えば、欧米諸国ではファーストネーム(名)の後にファミリーネーム(姓)という順序で名前が記載されるが、日本に合わせて「姓名」と正しい順序で記載されるようにし、日付も日本語で一般的な「年月日」の順序で表示するようにしている。
その他、インボイス制度に対応した請求書の作成、日本語での正しい会社名の表記など、日本市場で受け入れられるようフィットさせた。
とはいえ、パテル氏は「まだ学んでいる最中であり、さらに適応させていきたい」と語る。「日本語で正しく表示されるのは当たり前として、表示速度や反応速度といったスピードも求められるだろう。これらを実現することで信頼されるブランドを構築でき、われわれのツールが見込み客にリーチできることをクライアントに知ってもらえるようになり、採用されると考えている」と抱負を述べた。
日本市場へのさらなるプロダクトマーケットフィットのため、「eコマースに関して専門性のあるチームを作り、代理店やテクノロジーパートナーとのエコシステム構築のために投資をし、日本市場のユースケースを理解したプラットフォームを提供できるようにしていきたい」とパテル氏は語った。
発表会後半では、アルビオン 国際ブランド営業部の榊原隆之氏(国内推販グループ長)と上崎氏によるトークセッションが行われた。
アルビオンはメールマーケティングを重視しており、「これは顧客へのラブレター」だと語る。
「顧客へ送るメールを大切にしている中で、キャリアメールやフリーメールアドレス向けだと届かないことがある。しっかりメールを届ける仕組みはないものかと考えているところで出会ったのがDotdigitalだった」(榊原氏)
「メールで売り上げを上げましょう、と持ちかけられていたら採用しなかったのではないか。『メールで顧客体験を高めましょう』と言ってもらえたので、ほぼ即決した」と振り返る。
Dotdigital以前のツールでは、メール到達率が不明だったため比較はできないものの、メール経由の売り上げが格段に上がっているため、開封率、到達率も改善しているのだろうと推測していた。
Dotdigitalでは、独自AI「WinstonAI」を開発しており、キャンペーンの即時翻訳、予測分析、リサーチなどで稼働させている。
今後は、「最適化された1to1メールコンテンツなどによる魅力的なコンテンツの作成、人員を割かずともAIアシスタントで優れたカスタマーエクスペリエンスを提供すること、自然言語を使ったレポートの分析や要約をできるようにしていきたい」とウォレス氏は語った。
上崎氏はDotdigitalが国内展開した理由や目標について「人材不足がうたわれている。リソースの少ない中で、どのようにより良い顧客体験を実現できるか。Dotdigital Japanはチームまた会社一丸となり、AIの力を借りて、日本のお客さまの顧客体験をより良くしていくことを目指していきたい」とまとめた。
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