――日立での部長職としてのマネジメント業務と、副業のビール醸造活動は、一見すると全く違う分野に思えます。ご自身の中でつながっている部分はありますか。
それはありますね。日立でやっている仕事は基本的にはB2Bの世界ですが、ビールの世界は完全にB2Cです。そこは大きく違います。分かりやすい例を挙げると、日立でビジネスの企画を立案して、実際にサービスを開発したとしても、成果が見えるのは数カ月後や1年後かもしれません。でもビールはサーブした瞬間に、顧客の反応が返ってきます。その期間の違いは非常に大きな違いです。おいしければお客さまの笑顔がすぐに見えますし、ダメなら逆に首をかしげられる可能性もあります。そのダイレクトさとスピード感は、私にとって新鮮な学びになっています。
ブルワリーの仲間と議論するときは、普段の日立のマネジャー目線とは逆で、私はできるだけファシリテートはせず、聞き役に回るようにしていることが多いです。一人一人のバックボーンや考え方が日立の社員とは全く違うので、「なるほど、そういう見方をするのか」と刺激を受けることが多いですね。自分はプレゼンや企画資料をまとめたり、言語化したりするところで貢献していますが、むしろ人の話を聞く姿勢を学ぶ場になっています。
この経験は、日立での本業にも役立っていると感じます。特に顧客へのプレゼンテーションでは、難解なことをいかに分かりやすく説明するかが重要です。Lumadaのように外から見ると分かりにくい概念をどう伝えるか。そこで副業のB2Cで得た「相手起点でシンプルに価値を伝える」感覚が生きていると思います。
自戒を込めてお話すると、われわれの資料はどうしても「自分たち側が言いたいこと」を詰め込みがちで、相手にとっては伝わらない、かつ膨大な物量になってしまうことが良くあります。しかし、ブルワリーでの経験から「なるべくシンプルに伝え切る」意識が強まりました。合意形成の仕方やプレゼン資料の作り方にも、よい影響が出ていると実感しています。
――副業での学びが、社内へのマネジメントに生きた点はありますか。
想像力と柔軟性が鍛えられました。過去の経験値頼みの意思決定を、極力避けられるようになりましたね。以前は自分の成功体験に多くの判断が引っ張られがちでしたが、今は他者のやり方に委ねるほうが良い場面では躊躇(ちゅうちょ)なく任せられます。状況をニュートラルに見極める癖が付きましたね。
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