そこで同社は、電話対応のDXを検討しはじめた。しかし検討当初は、葛藤の方が大きかったと振り返る。
「お客さまと直接対話できる電話を、機械に任せてしまっていいのだろうか。そんな懸念があったのです」(劒持氏)
近年、インバウンド需要の拡大に伴い、レンタカー業界を取り巻く環境は大きく変化した。限られた人材で急激に増えた需要になんとか追いつこうと、業界全体でDXが急速に進み、サービス内容が進化を遂げた。
同社もCSの向上、サービスの向上に向けた取り組みとして、価値や利便性の拡大、二次交通の充実を進めてきた。学校や行政との連携、損保会社やナビメーカーとの協働による安全運転促進アプリの開発など、さまざまなDX施策を展開する。
その結果、効率化・省人化が進んだが、直接顧客と会話できる機会は減少していった。そのため、「人」が対応する予約センターを、大事なタッチポイントとして捉えていたのだ。
一方で、「応答率60%程度」という現実的な課題に向き合う必要もあった。スタッフを増員しようにも、独り立ちするまでにはかなりの時間がかかる。
また、レンタカー事業という特性上、繁忙期と閑散期の波が大きく、人員配置の最適化も難しい。そこで、IVR(自動音声応答)やSMSを活用したシステムの導入を具体的に検討し始めることとなった。
劒持氏が課題視していたのは、単なる予約の取りこぼしではない。「お客さまが困って電話をくださっているのに、受け入れられていない。それが問題でした」と振り返る。
予約センターには、予約以外の問い合わせも多く寄せられる。車種や装備についての質問、精算明細書などの再発行依頼、忘れ物の確認など、内容は多岐にわたる。
その中には、人が直接対応しなくても解決できる問い合わせも少なくない。こうした業務をAIやSMSで処理できれば、「人」はより複雑な相談に集中でき、対応の幅が広がる。大事なタッチポイントを守りながら、効率化が可能だ。
また、営業時間外でも対応できる、待ち時間なく情報を得られるといった顧客視点のメリットが生まれることも、導入の大きな後押しとなった。
ただし、導入は慎重に進められた。予約センターで全店舗の電話を受けている中で、まずは数店舗から始め、特に問題がないことを確認してから段階的に拡大していった。検討開始から本格導入まで、約半年の時間をかけたという。
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