現在、住友商事の生成AIツール月間アクティブユーザー率は約90%に達している。毎日利用するユーザーは約2000人に上り、年間のコスト削減効果は約12億円と試算されている(※)。
※参照:コスト削減効果は年間約12億。住商の「生成AI活用」最前線
浅田さんの視野は社内にとどまらない。「生成AIを活用して、日本の生産性を変えたい」とより大きな展望を話してくれた。
ある調査によると、日本の生成AI利用率は欧米と同程度だという。しかし、利用者の満足度は、欧米を大きく下回っている。使っている製品やモデルはほとんど同じなのに、だ。
「つまり、満足度が低い原因はツールの性能の問題ではない、ということです。使う側の意識、業務をどう変えていくかという向き合い方の問題だと思っています」
浅田さんは、人が行動を変えるまでには段階があると考えている。まず存在を知る。次に使い方を理解する。その上で、使うかどうかを自分で判断する──情シスの仕事は、社員が「自分の意思で使いたい」と思える状態まで導くことだ。
そのために浅田さんが大切にしているのが、まずは自ら発信する姿勢だ。成果やノウハウを抱え込まず、周囲に惜しみなく共有する。すると共感者が現れ、その人もまた発信者になる。
浅田さんが好きな、「TED Talks」の動画について話してくれた。野原で1人の男性が踊り始める。最初は変人に見えるが、2人目、3人目が加わると、やがて100人以上の群衆になる。「How to start a movement」という動画だ。
「誰かが最初に踊らない限り、変化は始まりません。僕は、その1人目でありたいんです」
住友商事での実践を積み重ね、社外にもその情報を発信していく。その先に、日本全体のデジタル変革がある。
「人と一緒に何かを成し遂げたい」。就職活動で見つけたその軸は、広報でも、情シスでも変わらなかった。届ける相手が社外から社員に変わっても、「かもしれない」の先にある可能性を信じて、最初の1人として踊り続ける。その姿勢が、IT未経験ながらも「利用率90%」を推進できた理由の一つなのだろう。
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