2025年12月3日、半導体大手の米マイクロン・テクノロジーが一般消費者向け事業からの撤退を表明したとの報道は、市場関係者に大きな衝撃を与えた。約30年にわたり、自作PC向けメモリの代表的ブランドとして親しまれてきた存在が、表舞台から退くことになるからだ。この出来事は、後年「時代の転換点」として語られる可能性がある。
マイクロンは、半導体リソースの配分を、AIデータセンター向けへ大きく切り替えたことを示唆している。従来の半導体市場には「法人向けで余剰となった生産能力が、比較的安価に消費者市場へ流れる」というエコシステムが存在した。しかし、AIデータセンター需要がその余剰を吸収する現在、個人向け事業の縮小は、そのままハードウェア供給の先細りを意味する。
市場価格の変動は、もはや通常のインフレの範囲を超えつつある。市場データによると、2025年10月時点で約8000円だったDDR5メモリ(16GB)の平均価格は、わずか2カ月後の12月には3万5000円前後まで上昇した。短期間で約4倍超という異例の値上がりである。
このコスト増は、メーカーの経営判断にも直結している。デル(Dell)は2025年12月17日受注分から、法人向けPCを最大30%の値上げに踏み切った。当初は10〜20%の値上げが検討されていたとされるが、最終的に30%へ拡大された。これは部材調達環境のひっ迫を如実に物語っている。
さらに世界シェア首位のレノボも、2026年1月以降は既存の見積もりをすべて失効させると取引先に通告した。企業間取引において価格の予見可能性が失われることは、企業のIT投資計画に深刻な混乱をもたらしかねない。
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